選手としてみた、されてみた龍神編【短編集】

喧嘩 Kentaro.T ページ28

健太郎と喧嘩した。

その内容はというと本当にほんの些細なもので、簡潔に言ってしまえば爪についてのことだ。


バレーボール選手という職業柄、常に爪は短く切ってあって当たり前という考えが彼の中にはあるようで、私の長い爪がどうにも気に食わなかったらしい。


ネイルをしたくて伸ばしているんだと主張しても、危ないから切りなさいの一点張り。

遂に私たちは声を荒げ合い、お互いの自室に閉じこもって、今に至る。


健太郎が私や私の周りが怪我をしてしまうことを心配してああ言っていたのは分かる。分かるけども。

おしゃれしたい気持ち、なんで分かってくれないかな。


悔しくてぎゅっと拳を握ったとき、部屋のドアがノックされた。



「A、ちょっといい？」


ドア越しに聞こえる健太郎の声。
私はゆっくりとそれを開けて、室内に彼を迎え入れた。



「···さっきはごめん。全面否定するような言い方ばっかりして、嫌だったよな」


いつもの優しい健太郎の声だった。
その声を聞いて少し冷静になって、私にもちゃんと非があるじゃないかとようやく気がついた。



『ううん、私のほうこそごめんね。健太郎は私を気にかけてくれてたのに、言ってること全然受け入れないで···幼稚だった』


私は自分の爪を眺めて、もう一度拳を作った。



『私爪切ろうかな。ネイルのためって言っても、流石に長すぎる気がしてきた』

「そっ···、か。ネイルしたらさ、もし良ければ見せて」

『うん、もちろん』


爪の先をパチンと切って、マニキュアを取り出した。


もう爪に乗せる色は決まっている。

青、水色、そして白。私の大好きな、東レの色。










(requested by ルカ様)

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