選手としてみた、されてみた龍神編【短編集】

嫉妬 Taishi.O ページ22

『太志くん、遂にこの日がやってきてしまったよ···』


Aは神妙な面持ちでそう言った。

内心めちゃくちゃ焦りながら、今日はなんの記念日だっただろうかと頭をフル回転させた。

でも答えにたどり着けず、俺は正直にAに言った。


「ごめん、今日なんかの記念日だったっけ？」

『いや、そういうんじゃなくてね』

「？」

『今日ね、私の推しの誕生日なの』

「···へぇ、」


Aの推しというのはどうやら韓国のアイドルグループの一人らしい。そして今日がその人の誕生日で、これから盛大にお祝いするそう。

その後も推しへの愛がなかなか止まらずに、俺に力説し続けるA。

俺はとうとう耐えきれなくなって、Aの口を自分の唇で塞いだ。


『んっ···太志くん？』

「もうその話しないで」


上から覆い被さるようにAを抱きしめると、彼女はとても申し訳なさそうに呟いた。


『嫌な思いさせてごめん。私が軽率だったね』

「···Aはさ、俺と推しどっちが好きなの？」

『そんなの、どっちも大好きだよ』


Aはその後、でもね、と言って続けた。



『推しへの"好き"は皆に分かってほしい"好き"だけど、太志くんへの"好き"は誰にも分かってほしくない"好き"だから。特別だから』


真剣な眼差しで見つめられて、さっきまでのもやもやした気持ちが急にくだらなく思えてきた。


「そっか、良かった···。俺もAが大好きだよ」


愛を確かめるように、もう一度Aにキスをした。



その後、俺もまんまとAの推しにどっぷりハマるのは別のお話···。









(requested by あべるー様)

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