選手としてみた、されてみた龍神編【短編集】

惚気 Yuki.I ページ18

パリ五輪出場が内定した次の日、朝のニュース番組に祐希が出ていた。

昨日の夜も遅くまでメディアに顔を出して疲れているだろうに、それを一切感じさせない彼のプロ精神には本当に頭が下がる。


『···さて、そろそろ朝ごはんにしますかね』


キッチンに向かおうと立ち上がった瞬間、ニュースキャスターのはつらつとした声がテレビから聞こえてきた。


《そういえば石川選手、先日一般女性の方とのご結婚を公表されましたが、その後の新婚生活のほうはいかがでしょうか？》

「あー、そうですね···」


急なプライベートな質問に苦笑いを浮かべた祐希。
なんと答えるのか気になって、もう一度ソファに腰を下ろしてテレビ画面を凝視した。



「奥さんが毒舌で僕結構ズケズケ言われるんですけど、でもズケズケ言いながらもなんだかんだ僕のことをすごく考えてくれてて···。ほんとに感謝してるし毎日幸せです」


スタジオの皆にキャーキャー言われて、ニヤニヤを隠しきれていない祐希。
隣に座っている藍くんに遠慮なく背中や肩をバシバシ叩かれている。


《それでは、こちらのカメラに向かって奥様に何か一言いただけますでしょうか》

「···A、いつもありがとう。愛してるよ」


そしてまた画面の向こう側が騒がしくなった。
画面には真っ赤な顔を両手で隠している祐希が大きく映し出されている。

私はテレビを消して、リモコンをテーブルに少しガサツに置いた。



『ばっかじゃないの···』




耳まで燃えるように熱くなって、誰も見ていないはずなのに、顔をクッションにうずめて隠した。







(requested by 金木犀様)

嫉妬 Tomohiro.Y→←プロポーズ Yuki.I

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す