選手としてみた、されてみた龍神編【短編集】

勘違い Tomohiro.O ページ13

日本代表の強化合宿中。

今日の練習が終わり、コート端でひとりボール磨きをしていると、後ろから手が伸びてきてひょいっとボールを奪われた。


「下手くそ」


智大はそう言い放つと、私の向かい側で胡座をかいた。


『手伝ってくれんの？やっさしーね』

「勘違いすんな。Aの手際が悪すぎて見てらんなかっただけ」


ボールをてきぱきと磨きながらぶっきらぼうに答えた智大。
彼の無駄のない手さばきに目を奪われていると、私の視線に気づいたのか、突然その手を止めた。


「···あのさ、もう部屋帰れよ。お前いると効率悪い」

『あっそ、そりゃごめんなさいね』


私は床に勢いよくボールを叩きつけてその場を去った。


廊下に出ると、ちょうどそこを藍くんが通りかかった。
彼は私の顔を見て何か察したのか、小さな声でなんかあったんすか、と訊いてきた。


『それがね、智大がなぜか私に当たり強いんだよ。私ボール磨いてただけでなんもしてないのにさ、あいつ嫌味しか言ってこないの。下手くそとか効率悪いとか、挙句部屋帰れとか』



愚痴を藍くんにひとしきりぶつけると、彼はニヤッと口角を上げた。


《もー、素直になりゃいいのに···》

『ん？』

《とにかく、あの人はAさんのこと嫌いじゃないから安心してください。むしろ···》

『むしろ？』

《···まぁ、近々そのお悩みは解消されると思いますよ。俺に任してください》

『あ、うん、よく分かんないけどよろしく』



その数日後、何が起きたのか本当にその悩みは綺麗に解消された。







(requested by ハミ様)

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