9. 相澤消太の場合 ページ10
しつこい
しつこい
しつこい
確かに、卒業までお預けだとは言った。
だがな、卒業式に、とは言ってねぇ。
そもそも、卒業式時点ってのは、
正確に言えばまだ学生なんだぞ…
しかも、あろうことかHRが終わった瞬間
個性をかけようとしやがった。
何の為に、今まで我慢してきたと思ってんだ。
早歩きで魅川から逃げるが
どこまでもついてくる。
なんなら、たまに個性かけようとしてきやがる。
ついに、外まで来ちまったじゃねぇか…
溜息を吐けば、
「相澤先生ーっ!!!大好きーっ!!!!」
絶対、校舎にも聞こえてるだろ…ってくらいの大声で
どストレートなことを言ってくるから
足がピタっと止まってしまった。
いや、駄目だろ。
額に手を当てながら、大きく溜息を吐く。
振り向いたら、負けだ。
振り向いたら、絶対個性かけられる。
そんなことは、わかってるのに…
「相澤せんせ…っ」
泣きそうな声に思わず、
振り向いてしまった＿＿＿
「ほんと、甘いよね」
べっと舌を出し笑っている。
HRの時は叱ったりしたが…
この3年で、本当に魅了をかけるのが上手くなった。
「そうだな…、で?見えてんのか?」
そう聞けば、
魅川の綺麗な目が、
どんどん、
どんどん、
潤んでいく。
「どうします?操る?」
「操れんのか?」
そりゃそうだろうな、と思いながらも
挑発するように聞いてみると
「めちゃめちゃ操れるよ」
満面の笑みを見せながら
「でも、使わないから、受け止めて下さい!」
こちらに走ってきた。
「しょうがないな」
俺に向かって
ぴょんっと跳ねて
首に腕を回してくるのを
しっかりと受け止める。
「相澤先生、大好き!」
「さっき聞いた」
「先生は?」
わくわくした顔で
俺の顔を見てくるから
「見たからわかるだろ」
ニヤリと笑って意地悪を言えば
ムッと怒った表情に変わる。
「ひどい!!やっぱり鬼!!悪魔っ!!」
そんなのを好きになったのはどこのどいつだ。
本当、もの好きな奴だな。
抱き抱えてた魅川を降ろして
泣きべそかいてる、頬に手を添えた。
「好きだよ、A」
途端に真っ赤に染まったAが
愛しすぎて、
目を丸くして固まってる可愛い顔に
唇を落とした。
「そこは、大好きでしょ…っ、めっちゃ赤のくせに…っ」
「真っ赤は、Aの顔だろ」
そう言えば、２人見合わせて笑った。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
