7. 相澤消太の場合 ページ8
「ねー、相澤せんせ?」
「なんだ、魅川」
「個性使ってもいい?」
「駄目だ」
A組の寮の点検をしていたら
共有スペースのソファに1人でいた
魅川に話しかけられた。
こいつは、なんでこんなに個性を使いたがるのか。
「…けち」
唇を少し尖らせて、拗ねたように言う。
こんな表情をされると、構いたくなってしまう。
魅川が座ってるソファに腰を降ろした。
「だから、訓練つけてほしいなら、他の教師にお願いしてやるって言ってるだろ?」
自身の膝に腕をつき、魅川を覗き込むように言えば
魅川は少しムッとした顔になった。
「…相澤先生がいいんだもん」
ひと回り以上も離れてるコイツを
可愛いなんて思ってしまう。
そんな俺を知られるわけにはいかない。
「担任だからか?別に訓練見なくても、生徒として大事に思っていないわけじゃない。」
不安にさせたんなら、悪かった。
そう言って、ぽんっと頭に手を置けば
魅川の頬がほんのり色付いた。
なんで、そんな可愛い顔を
こんなオッサン相手に向けてくるのか。
「別に不安とかじゃない。相澤先生がちゃんと、生徒を大事に思ってくれてるのはわかってる」
ふいっと目を逸らされた。
「ただ…
好きな人の色が、気になっただけだもん」
ポツリと呟かれた言葉に
俺は思考が停止した。
好きな人…?
魅川の顔を見れば
先程とは比べ物にならないくらい
赤い顔になっていた。
人を赤くさせているとこは、よく見るが
魅川自身が、こんなに赤い顔は見たことがない。
「なんだそれ、可愛いな」
思わず、口に出してしまった本音に
魅川の顔は更に真っ赤になった。
「見るか?今。」
「えっ…い、今?ここで?」
いざ、許可を出したら出したで
あわあわしている。
「いや、でも、これで黄色以下だったら…もう立ち直れない」
そんなわけないだろ、と呆れながらも
涙ぐむ姿を可愛いとも思ってしまう。
「いや、やっぱ見る!」
そう言い、個性を発動…
させなかった。
「先生ずるい!!抹消使うなんて!!」
「使わないなんて言ってない」
真っ赤な顔で怒る姿が面白くて、つい笑ってしまう。
「やっぱり、卒業するまでお預けだ。」
ポンポンと頭を撫でながら立つと
不服そうな顔をしていた。
「大事な生徒に、手出すわけにはいかんだろ」
そう言い、ニヤリと笑えば
不服そうにしてた顔が、ふにゃっと緩む。
「ちゃんと待っててね、先生」
「そっちこそ、心変わりとか無しだぞ」
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
