4.轟焦凍の場合 ページ41
最近、魅川の様子がおかしい。
目が合えば逸らされるし
声をかければ
焦ったように、すぐどこかに行ってしまう。
正直、凄く寂しい。
今も、食堂で緑谷と飯田と飯を食べていたら
魅川と目が合った。
いつもなら、可愛いらしい笑顔で此方に来るのに
今日はパッと顔を逸らされて
逸らした先にいた、上鳴達の席へ行ってしまった。
「お、Aじゃん。一緒に食う?」
「うん。入れてもらおうかな」
楽しそうな声が聞こえてくる。
そこそこ賑やかな食堂なのに
何故だか会話が耳についた。
「あ、Aちゃんだ。やっぱ可愛いよなー…」
「Aちゃんがプロデビューしたら俺推すわ、絶対」
知らない奴らまで遠巻きに魅川を見ていた。
確かに、可愛いけど
誰だお前ら。
なんだかイラついてしまう。
上鳴や切島や瀬呂が
A、A、と呼びながら話をしているのを聞いて
ふと、自分は名字呼びだと気付いてしまい
一つの結論に行き着いた＿＿
そうか、もっと仲良くなるには
Aって呼べばいいのか＿＿＿＿
「あの、轟くん?さっきから大丈夫?」
「俺も気になっていた。悲しそうにしたり、苛ついた顔をしたり、呆けたり…なんだか顔が忙しいぞ」
緑谷と飯田に心配されて驚いた。
まさか、自分の表情がそんなにころころ変わっているとは。
「いや…少し考え事だ」
「考え事か…よければ話を聞くぞ」
「うん!悩みなら僕も聞くよ!」
飯田と緑谷が真剣に
自分の話を聞いてくれようとしてくれる。
やっぱり良い奴らだな…と思いながらも
それを断った。
「大丈夫だ。実はもう解決した。」
「え?」
ぽかんとした緑谷を尻目に
食事を済ませたトレーを手に立ち上がる。
「行ってくる」
トレーを返却口に返してから
一直線にAの元へ向かえば
先に気付いた切島と瀬呂が不思議そうな顔になった。
「どしたー?轟」
瀬呂に声をかけられ
Aや上鳴や爆豪もこちらに気付き振り向いた。
「魅川に用がある」
「わ、私?」
それに魅川が慌てだす。
やっぱりそうだ。
「俺はもっと、お前と仲良くなりたいと思っている」
その言葉に、食堂が静かになった気がした。
「だから、今日からAって呼ぶから、お前も焦凍って呼んでくれて構わない」
Aの顔がボンっと真っ赤になった。
…可愛い。
返事を貰おうとしたら、
「キメェこと言ってんじゃねぇ!!だからテメェは、舐めプなンだよ!!」
爆豪の爆破に邪魔されてしまった。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
