4. 相澤消太の場合 ページ5
「大丈夫では無さそうだな」
「すみません…」
男らしい手で肩を支えられながら
相澤先生が覗き込んでくる。
恥ずかしいやら、なんやらで
顔が熱くなってしまい、目を逸らしてしまった。
「…悪い。嫌だったか」
そう言い、パッと離されてしまい
ちょっと…残念に思った。
「嫌じゃない…けどっ、」
ソワソワした感情を紛らわす為に
下ってきた髪を右耳にかける。
「なんか、先生、男の人みたい…」
それに、相澤先生は眉間にシワを寄せて固まっていた。
「なんだと思ってたんだよ…」
そう呟き、パソコンを脇に抱えると
背中を丸め怠そうに歩き出したので
私もそれに慌ててついて行く。
静かな校舎で、2人だけの足音が響いてて
不思議な感じ…
そう思いながら歩いていれば
「お前、ちょっとは危機感持てよ」
溜息混じりの声が聞こえた。
あ、これは、説教が始まる雰囲気だ。
私の背筋が条件反射でぴんとなった。
「瀬呂も言ってたが、初見の敵がピンクはやばいからな」
「え、初見ピンクなんてラッキーって思いますけど」
そう言えば、相澤先生は呆れたように見てきて
くいっと顎をとり、顔を少し近付けてきた。
「敵は、手に入れる為ならどんな事でもしてくるぞ。」
少し低い声で言われて
初めて、それが怖い事だったと認識したのと同時
どきんと、大きく胸が鳴った。
これは明らかに恐怖とは違う、別の感情。
どきん、どきんと心臓が早鐘を打ち出したとこで
ペシッと額を叩かれ
ふいっとまた顔を前に向けて歩き出した。
「ただでさえ、お前は男心擽るような面してんだ。場合によっちゃ、黒や青よりも用心しろ。」
「っ…、すみません」
暫く静かに歩いてると、寮の前についた。
ふと、さっきの言葉を振り返ると
気になる疑問が浮かんだ。
「ねぇ、相澤せんせ」
「なんだ」
「相澤先生も、私に男心擽られちゃったりする?」
揶揄い半分
何故か淡い期待半分。
にっこり笑って聞いてみる。
でも、私はまだまだ子供で
相澤先生はやっぱり大人だった＿＿＿
「さぁな」
一瞬だけ、目を見開いたかと思ったのに
すぐにニヤリと色気を含んだ笑みを見せる。
こんな顔、見たことない。
顔に熱が登り
その頬を相澤先生が触れる。
「もう一つ忠告してやる」
相澤先生の指が、頬を撫でるように動いた。
「大人を揶揄うと、何倍にもなって返ってくるぞ」
「いったぁぁぁい!!!」
その指は、餅でも伸ばすかのように
私の頬を抓ってきたのだった。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
