15.ホークスの場合 (Final episode) ページ36
記者会見が終わり
画面がスタジオに切り替わると
ぽけっと惚けていたMC達がハッと我に返ったように
進行しだした。
画面下にはSNSでの反応が流れてくる。
それはチャームに対してのお祝いの言葉から
チャームへの愛や感謝を伝えるものまで様々だ。
放心状態のまま、自分のスマホでもエゴサしてみれば
チャームに対しての嫌悪や憎悪の気持ちは微塵もなくて
チャームへの愛で溢れていた。
この世界は最早、彼女の理想である
ぬるま湯のような温かい世界なのだろうか。
テレビが違う情報に切り替わっても
俺の心はぽけっとしたまま。
ここで一瞬、相手は本当に俺なのか?
という疑問が浮かぶ。
というのも、ここ最近会っていない。
お互い忙しいのもあるが
それでも週2回は泊まりに来ていたのに
ある日を境にピタリと来なくなり
理由を聞いても忙しいからと流されていた。
最悪の結末が頭を過った。
暫くすると、ガチャっと鍵が開く音が聞こえて
俺は慌てて玄関へ向かう。
聞きたいことが、山程ある。
「Aっ…!!」
「ただいま、啓悟。会見みた?」
いつものほわほわした可愛い笑顔だ。
「ねぇ、俺…プロポーズしてないよね?」
「うん。聞いてないねぇ。」
「え、じゃあ、どういうこと?」
あっけらかんと笑う彼女に
俺の頭は余計に混乱した。
「黙っててごめんね」
その一言で、悪い事が頭を過り
心臓がキュッと縮んだ気がした。
でも、続いて出た言葉は
とっても幸せなもの。
「私、赤ちゃんできた。」
Aが優しい顔で、自身のお腹を撫でていて、
俺は目頭が熱くなる。
「私と幸せな家庭を築いてくれませんか?」
ぽろっと涙が溢れてきた。
待って、これ逆でしょ。
俺だって色々考えてたのに…
「…夢全部かなっとーね」
「うん。後は理想の旦那様像の、啓悟からの返事待ち」
「…俺、もうNo4まで降格しとーとに、よかと?」
ナンバーに拘りはないが、
今ではNo1からNo3まで彼女の元級友が席巻してる。
No2とNo3に関しては、彼女に好意もあると思う。
「私の中では、あの時からずっと、啓悟がNo1だよ」
思えば、高校生だった彼女の
夢と理想を初めて聞いたあの日から
俺はずっと彼女に魅了され続けた。
どうしても手に入れたくて
高校生相手に些か大人気なかったと思う。
「A、俺と結婚して。俺と…家族になって。」
「ん。私が貴方を幸せにしてあげる」
「もう幸せだよ」
これから先も、ずっと…
君がいてくれるから。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
