14.ホークスの場合 ページ35
8年後＿＿＿
「No8ヒーロー、チャームの緊急記者会見が間もなく始まろうとしています。」
歯磨きをしながら
朝のニュースをぼけっと見てれば
沢山のフラッシュに囲まれた
俺の彼女がテレビに映る。
思わず、歯ブラシを落としそうになった。
え、どういうこと?
ゴシゴシと目を擦るが
映っているのは、やっぱり俺の彼女。
ちょっと待って。
緊急記者会見って何?!聞いてないんだけど。
俺彼氏なのに何で知らないの?!
本当にコレなんの会見?!
急いで歯磨きを終わらせ、口を濯いでテレビの前に。
タイミングを見計らったように
Aの口が開いた。
「この度は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。」
心臓がドッドッと変に強く脈打った。
「本日は謝らないといけないことがあります。」
一瞬の沈黙の後、
「私、チャームは、本日を持ちましてヒーローを引退させていただきます。」
ざわざわと記者がざわつき
フラッシュが激しくなる。
引退?!
え、なんで?!
まだ26歳でしょ?!
ていうか、俺なんにも相談されてないんだけど?!
「夢だったヒーローになって、8年。仮免を入れれば10年。ヒーローとして、ヒーローらしく、この国の平和と幸せを守る為に精進してきました。」
知ってるよ。
そんなこと、皆知ってる。
どんな状況でも明るい笑顔で先陣をきって
優しい笑顔で皆を守ってきた。
敵にですら彼女のファンは多い。
「急で大変申し訳ありません。
でも…、私はもう一つの、夢を叶えたいと思います。」
もう一つの夢って…
思い浮かぶのは、彼女が高校生の時に聞いた夢の話。
「今日でみんなのチャームは卒業して
私が心から愛する彼のチャームになります。」
本当に言ったよ…
あのセリフ…
いやいや、待って。
俺プロポーズした…?
「チャームさん!それは結婚ということでしょうか?!」
「お相手の方は一体どなたでしょうか?!」
記者からの質問が飛ぶと
Aはいつも人々を魅了してきた笑顔を見せて
「今から行くね」
テレビ越しにメッセージを伝えてきた。
記者達は聞きたいことが沢山あるはずなのに
全員ぽけっとしている。
「全員…とはいかないけど、ここ1年は紫やピンクに溢れた世界で、私はとっても嬉しかったです。応援してくれた皆様、そして大切な
俺だけに見せてくれていたはずの
幸せそうな笑顔で会見は終了した。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
