10.ホークスの場合 ページ31
「え、常闇くん、空飛べるの?!」
「いや、まだだ。今ホークスに教示してもらって、どうやって飛ぶか考え中だ」
インターンに来たものの、ホークスは殆どいない。
私は顔を合わせる事なく
サイドキック達と後処理ばかりしていた。
「え、ホークスに会ったの?」
「昨晩」
常闇くんのとこには顔を出したらしい。
いや、教え子としてもショックなんだけど。
どうやら、2人で空中散歩したらしい。
「…やっぱ来なきゃ良かった」
ぶすっとしながら呟けば、常闇くんに苦笑いされた。
いや、いんだけど。
顔合わせない方が、仕事捗るし。
サイドキック達が色々教えてくれて勉強になってるし。
「チャーム、これ所長室に置いてきて」
サイドキックに渡された書類を所長室に持っていく。
どうせ、中にホークスはいない。
ガチャっと開ければ、半裸のホークスと目が合った。
え、
「Aちゃんのえっち」
ニヤリと笑われて
私は顔に熱が上がり、ホークスに背中を向けた。
「なんでいるんですか?!」
「いや、ここ所長室。俺の部屋だから。」
そりゃそうだけど!
確かにノックしなかった私が悪いんだけど!
「ど、どこから入ったんですか?!」
「窓。言ってなかった?俺ここからよく出入りするよ?」
ケラケラした笑い声と着替える音が聞こえる。
最悪だ。
本当、最悪!!
恥ずかしさに押し潰されそう。
「ごめんねー。呼んどいて、中々相手できなくて。」
「いえ、お構いなく!」
ていうか、いつ振り返ればいいの?!
早く書類置いて戻りたい…!!
暫くの妙な沈黙に
私は硬直していたのに
トンと肩に乗った重みに余計に身体が固まった。
「えっと…なにされてるんです?」
ホークスが私の肩に額をつけてのしかかっている。
「んー?充電中」
私、チャージズマじゃないんですけど。
「なんか、疲れてます?」
「そりゃあ、偉大なるNo1が引退して、実質俺No2ですから」
色々あるよ＿＿
と流された。
そりゃあ、学生なんかには言えないのだろう。
「俺は、チャームやツクヨミみたいな
…未来ある若者達が、幸せになれる世界をつくりたいの。」
その言い方に嫌な違和感を覚えた。
まるで、そこに自分はいないみたい。
私は振り返って、ホークスを見た。
「未来ある若者は、ホークスもですよ。」
それに目を見開けば
「まいったな」
と呟き、優しい顔で笑ってくれた。
彼が大変な立場に置かれていることに
学生の私は全く想像もできていなかった。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
