8.ホークスの場合 ページ29
「やっほー、Aちゃん」
「…夢?」
私は夢でも見ているのだろうか。
何故、ホークスが私の寮の部屋のベランダにいるのだ。
いやいや、雄英のセキュリティをどうかいくぐった?
ぽかんと呆けていると
その顔がよっぽど変だったのか、可笑しそうに笑われた。
「Aちゃん、ほんと愛らしかねぇ〜。夢じゃなかよ。」
ポンポンと頭を撫でられて
ハッと意識を正常に戻した。
「な、なにしに来た…んっ?!」
ちょっと大きな声が出てしまい
それをホークスが慌てて手で塞いでくる。
「静かに!俺お忍びだから!」
しーっと人差し指を口元にやる。
それだけで絵になるんだから…
本当イケメンってずるい…
むすっとしてると、私の口を覆っていた手が外された。
「仮免、受かったんだって?おめでとう」
そう言うと、綺麗な小さめの紙袋を渡される。
「え、なんですか?これ。」
「可愛い教え子にお祝い」
不審がりながら、紙袋の中を見れば
上品な箱が2つ。
しかも、これは福岡で有名なチョコレートショップのもの。
ちょっと待って、私めっちゃ食べたかったやつ。
「気に入った?一つは常闇くんにあげてね」
ホークスが、初めて神に見えた。
「ありがとうございます!ホークスの教え子でよかった!」
大喜びしながら言えば
ホークスもにこにこしている。
「じゃ、ちょっと貸して?」
今渡されたばかりの紙袋から
チョコレートの箱を取り出し
それをおもむろに開けられた。
中には美味しそうなチョコが6個。
上段真ん中の赤いハートのチョコが一際可愛い。
そう思って見てると、ソレを取られる。
「え…」
「口、あけて?」
ホークスの左手が私の顎に触れ
暗示にでもかかったように、私は口を開けた。
そこに、ハートのチョコを入れられれば
口の中にじんわり甘さが広がってくる。
「今キスしたら、甘かろうね」
ニヤリと笑われ、私の顔は一気に熱が上がった。
「な…っ」
「心配せんで。これでも一応ヒーローやけん、無理やりはせんよ。」
そう言い、チョコをまた紙袋にしまい渡された。
固まってる私にホークスは笑って首を傾げる。
「して欲しいなら喜んでするけど?」
「結構です!」
それに即答すれば、いつものへらっとした顔で笑った。
「残念。でも次、会う時は俺に惚れとーかもね」
インターン待ってるよ＿＿
そう言って赤い羽根を広げ飛んでいってしまう。
心臓が警鐘を鳴らすよう激しく鳴り
私は暫くそこを動けなかった。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
