5.ホークスの場合 ページ26
「よかったのか?」
「なにが?」
「ホークス。引き止めてなかったか?」
常闇くんが心配そうに聞いてくる。
でも、私はホークスの事を
この職場体験で俄然苦手になっている。
職場体験前は好きなヒーローだったんだけど…
「いいよ。どうせ揶揄って遊んでるだけだよ」
この4日間で
ホークスとは剃りが合わないとハッキリしている。
一生懸命走ってる常闇くんを尻目に
馬鹿にしたように空を飛んでるとこも気に食わない。
黄色だとわかっているのに、私に何度も個性かけて見させようとすることも気に食わない。
「私の推しはオールマイトだけになったわ」
「え、それって俺も推しだったってこと?」
やだやだ、幻聴が聞こえる。
上を見れば、剛翼を広げてへらっと笑うホークスがいた。
「盗み聞きとか最低ですよ」
「職場体験を受け入れた以上、無事に宿泊先まで送らないと。気づかなかった?初日からずっと送ってたんだよ?」
気づかなかった…
常闇くんの顔を見れば、彼も驚いた顔をしていた。
「ちなみに初日は俺の愚痴、二日目はクラスメイトの話、三日目も俺の愚痴、で四日目が今日。」
わぁ、ぜーんぶ愚痴聞かれてる。
いや、常闇くんは殆ど言ってない。
私が一方的にずーっと言ってた。
「えへっ」
首を傾げても、ホークスは笑っているだけ。
顔色1つ変えないから、逆に怖い。
「まぁね、君達の立場だったら、俺も愚痴言ってるから。それは別にいいんだよ。そんなことより、さっきの答えは?」
"俺も推しだったってこと?"
これの答えということだろうが…
言いたくないなぁ…
なんかミーハーみたいじゃんね。
「常闇くん、帰ろう」
「いやいや、今度は帰さないよ」
目が光った気がした。
獲物でも見つけたような。
「まぁ、職場体験前の話ですけど…」
「へー!嬉しいな!どこが好きだったの?」
真正面から聞かれて
さすがに私も恥ずかしくなる。
どこが好きとか、言えるわけがない!
「Aちゃん、顔真っ赤。バリ愛らしかー」
ホークスは揶揄うように言ってきて
なんか、本当むかつく!
「魅川、帰ろう。」
常闇くんが腕を掴んで引っ張ってくる。
「悪い虫から守るようにと、級友達から頼まれている」
常闇くん、カッコいい!
「まぁ、いいや。今度聞かせて」
そう言いながらも、へらへら笑いながら
ホークスは宿泊先まで送ってくれた。
宿泊先へ入るのを確認して、手を振り飛んでいく姿を
カッコいいと思ったことは絶対言わない。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
