9.爆豪勝己の場合 (Final episode) ページ21
顔を見れば
ぽろぽろと涙が溢れていて
場違いな言葉だとはわかってるが
"綺麗"だと思った。
「…悪い」
自分の袖で涙を拭ってやるのに
Aの涙は全然止まんねぇ。
むしろどんどん溢れてきやがる。
「爆豪くんの気持ちがわかんない…っ」
んなもん、一つしかねぇ。
なんでわかんねぇんだよ。
「…個性使ってみろや」
そう俺が言うと、Aの潤んだ目と目が合った。
「赤…?」
Aが驚いたように呟いた瞬間
腕を引き、顎を取る。
「で?テメェは何色なんだよ」
鼻先が触れる距離で聞けば
顔が真っ赤に染まっていく。
「あ、赤…です…」
答えを聞いて、すぐ口を塞いでやった。
鼻を掠める甘い匂いと
柔らかい唇に
どんどん魅了されてしまう。
唇を離して目を合わせると
恥ずかしそうに目線を下に向けた。
「好きだ」
「へ?」
「俺がテメェ貰っていいよな?A」
ぽかんとしたかと思うと
今までで一番真っ赤な顔を見せる。
「返事は」
黙ったままのAに催促すれば
小さくコクンと頷き
「はい…」
と蚊の鳴くような返事が返ってきた。
自然に自分の口元が弧を描く。
「そーかよ」
満足して、寮へ足を進めたら
背中から温かくて柔らかい感触を感じ
身体がガチっと固まった。
「…ンだよ」
「やられっぱなしだから、ちょっとは照れさせようかなって…」
ぎゅっと後ろから抱き締められるなんて
予想外過ぎて
身体が熱くなるのを感じた。
「…すき、大好き、爆豪くん」
華が咲いたように笑うソイツに
俺はまた魅了されてしまう＿＿＿
「爆豪くんも、真っ赤なったね」
悪戯が成功したガキみてぇに笑って
さっさと俺を抜いて、寮の中へ入ってしまった。
溜息をつきながら
頭を抱えてその場に屈んでしまう。
「くっそ強ぇ個性…」
多分、俺はAに一生敵わねぇ。
いいんか、それで…
「なにしてんの?」
先に中に入ったはずなのに
玄関ドアから、Aがひょっこり顔を出した。
くそムカつく。
でも…
「早くおいでよ、勝己くん」
くっそ可愛い…
「はぁ、もうテメェには一生負けでいいわ」
溜息混じりにそう言えば
目をぱちくりさせている。
「どゆこと?」
「俺は一生Aが好きだつっとンだわ」
寮に入りながら、ポンと頭を撫でれば
幸せそうに笑いやがった。
精々そんなふうに笑ってろ。
一生敵わねぇが
俺はAを
一生離す気はねぇからな。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
