5.爆豪勝己の場合 ページ17
「期待したンか」
「してないから!!ばかっ!!」
挑発すれば、真っ赤な顔で怒ってきた。
くそ、可愛い。
思わず溜息がでる。
ノートは貰っちまったし
ここに居座る理由は他にねぇ。
だいたいコイツ
俺の色がわからないとか何とかぬかすが
それはこっちの台詞だ。
脈があるのか、ねぇのか
さっぱり検討もつかねぇ。
「帰るわ」
「え、もう帰るの?」
立ち上がった俺の袖を引っ張り
見上げてきて、首を傾げる。
これだ。
この感じが良くわかんねぇ。
そのくせ、多分これは、俺だからそうしてるわけじゃなく
恐らく、ここに居たのが
アホ面でも、クソ髪でも、醤油顔でも…
おんなじ事をするのだ。
このクソ女は。
「帰って欲しくねぇンかよ」
「にゃにしゅんのよっ!」
右手で両頬を挟むように掴むと
ぷんすか怒り出した。
綺麗な顔が可愛いらしく歪み
唇はタコみてぇな口なのに
これはこれで可愛いと思ってしまう。
つーか、柔らかそう。
「てめえ、あんま思わせぶりなことしてっと、」
「ふぁ?!」
「そのうち、こんなふうに食われンぞ」
それに触れるだけのキスを落とせば
目を丸くしてぽかんとした間抜け面で見てくる。
頬を離せば、少し赤くなってて
ほんの少し可哀想になったから
しゃがんで、それを擦ってやった。
擦ってやってんのに
頬はどんどん熱くなり赤く染まっていく。
「な、なに…した?」
パクパクしてる。
すっげぇ間抜け面。
でも、可愛い。
「キス」
少しは意識しやがれ。
「な、んで…??」
ンなもん、答えは1つだろ。
それすらわかんねぇ、ちゃらんぽらん。
「言っただろ、テメェが欲しいって」
ペロッと下唇を舐めて
挑発するように目を見て笑ってやる。
「だから、貰った」
すげぇ真っ赤。
ふと、ベッドに白いモコモコの毛布を見つけた。
あぁ、これか。
アホ面が言っていた、毛布って。
それを取り、今だに放心状態のそいつに頭から被せてやる。
「え、なに…」
ぎゅっと手は自然にその毛布で身体を包むよう動いた。
モコモコ素材が相まって
雪だるまみてぇ。
「これからは、男を簡単に部屋入れんなや…A」
そう言って、返事も聞かずに部屋を出た。
やり過ぎたとは思わねぇ。
全部アイツが撒いた種だ。
これで意識すれば、それでいい。
Aは、誰とでも平等に
仲良く、優しく、好意をしめす。
それを頭1つ抜きん出て、あいつの色を赤く染めるには
こんくらいしねぇと無理だろ。
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作者名：chieko | 作成日時：2024年3月6日 15時
