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男「いてっ...」
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クッションの先から覗かせた顔は
さっきみたいなくしゃくしゃの笑顔じゃなくて
感情のない冷たい表情だった
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動物的本能が
“お前...やっちまったな”
信号を出しているのがわかった
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ヤば…
と思った次の瞬間には
右手を掴まれて
その冷徹な眼がグイっと近づくと
右口角だけをしたり上げ
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男「何もされてないんだし
もっと喜べば?
それとも “ 何 か ” してほしかったわけ?」
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やたらと“何か”という部分を強調しながら
プックリとしたその唇が
手の甲をすすっとなぞった
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博美「っ.....!?」
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そこから走るゾクゾクとした感覚に
体が一瞬すくむ
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私...バカだ
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逃げなきゃヤバい
こんなやつのペースにもっていかれちゃダメだ
逃げなきゃ
叫ばなきゃ
振り払わなきゃ...!!
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男「ごめんごめん
悪かったって...
だからそんな顔しないでよ」
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私はどんな顔をしていたのか
それは全くわからなかったけど
きっと流れ落ちそうな雫が
彼の掴んだ指を緩めた
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泣きたいわけじゃなかった
だけど
昨日からの不安や怖さ
そして...
彼の手の温もりが
本気じゃないってわかったから
からかわれてる悔しさに
悪い人じゃないんだって安心感が
頬を伝いたがったんだと思う
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作者名:橘花恋 | 作成日時:2012年9月4日 2時