人間と妖怪とあやかしと。 (ページ12)

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第十二話ページ12

手を組んだ私たちはそれぞれ分かれて情報収集に励み、次に会ったのは月が綺麗な真夜中の墓場だった。

どうやら水木さんは何か考え込んでいるのか、少し俯いている。

『こんばんは、水木さん。』

「墓場で考え事とは趣味が良いのう。
……一杯付き合わんか。」

そう言って、ゲゲ郎が天狗の酒を取り出す。
こうして、3人の月夜の飲み会が始まった。

この酒は山の向こうの鴉天狗が仕込んだかなりの上物だ。だからか、あれよあれよと酒は減っていき、あっという間に酔いが回る。

「聞け、水木、A！わしの妻は強くて、綺麗で、可愛くて、美人で、綺麗で…」

「おっ、おう…」

そんな惚気を大量に吐き出しながら、ぽろぽろと泣き出すゲゲ郎。
さっきと全く違う態度に、流石の水木さんも少し驚いているようだ。

「……そして、人間を愛しておった。」

ゲゲ郎のその言葉に、水木さんの酒を飲む手が止まる。

「ゲゲ郎、Aさん。…俺のことは、憎いか？」
　
「……いいや、お主は別じゃ。」

『うん。私たちや岩子のこと、心配してくれたからね。』

「……そうか。」

そう一言だけ呟き、また酒を口に運ぶ水木さん。

「俺から見ても、一度滅びちまえば良いと思うよ、人間ってやつは。」

『…ありがとう、水木さん。私たちと、ゲゲ郎と出会ってくれて。』

水木さんがいなかったら、ゲゲ郎の人間嫌いは一生治らなかったことだろう。

あんなに人間を憎んでいたゲゲ郎が、今では人間と酒を飲み交わしている。きっと心の底で、水木さんを友と認めている証だ。

長年ゲゲ郎を見てきた私からすると、なんとも微笑ましい。

「あぁ、わしからも感謝するぞ、水木。」

「何だお前ら、急に…。」

なんてことを言いながらも、酔っているのか、照れているのか、顔が赤い。

それから、色々なことを話した。幽霊族のこと、あやかしのこと、私たちの生い立ち。

こうして、長い夜はふけていくのであった。