6 向かい合わせと暮らし ページ6
同じ食卓を囲むだけで、カルエゴさんの知らなかった部分がどんどん見えてくる。
フォークとナイフを持つ手が綺麗だとか、絶対口に含みながら喋らないとか、背筋が異様に綺麗だとか。
料理は自分だけで楽しむものではないのだと、実感する。
「あはは、大変そうですね。教師の仕事」
「全くだ」
「……ね、カルエゴさん。僕嬉しいです。もっとカルエゴさんと喋りたいです」
「面白い話なんてないぞ」
「いいんです。面白くなくても。こうやって誰かと喋るの、久々で楽しいんです」
「……ふん」
その後和やかに談笑しながら、食事を終えた。食器を洗おうとカルエゴさんの分もシンクへ持っていこうとすると、その手を制される。
「俺が洗う」
「あ、別にいいですよ。僕皿洗い嫌いじゃないし」
「俺が、洗うと言ってる」
僕のお皿も奪われると、そのままシンクへと行ってしまった。
やけに強引だなあ。
でもその後ろ姿を見るのも、新鮮で悪くなかった。
*
それからカルエゴさんは夜は比較的早めに帰ってくるようになった。料理が口にあったのかな。それはとても嬉しい。作りがいがあるというものだ。
食事をしながらたわいもない話をすることは、一日中家でゴロゴロしている僕にとって憩いの時間へとなった。
そうしていくうちにいつの間にか、家事が分担制へとなっていった。料理は僕で、皿洗いはカルエゴさん。他にも掃除洗濯は僕で、風呂掃除ゴミ出しはカルエゴさん。
お互いがやりやすいものを、それぞれが自らやりだしていく感じは、ふたりでちゃんと住んでいる感があっていいなと思う。
別に僕は一日中家にいるのだし、全部請け負っても時間は余るのだけど、分担制にすることで、自分の時間にゆとりができて、生活がしやすくなったのは事実だ。
書斎の本を読んだり、パソコンでオンラインゲームをしたり、たまにお菓子を作ってみたり、何故か置かれているグランドピアノを弾いてみたり。
あっちにいた時よりも、心穏やかに自分の時間を大切にしながら生活している。
向こうにいた時は、そんなことを考える暇もなかったし、幸せになっちゃいけないと思ってたから。
だからここにいる間だけは、許して欲しい。
今だけ、だからさ。
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奏(プロフ) - 本編もおまけもとっても面白かったです〜!友達以上恋人未満の関係の設定がめっちゃ良かったです!作品制作お疲れ様でした!作者様の他作品も見させていただきます〜! (2023年2月25日 8時) (レス) @page37 id: 89231dfe0c (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ガスカさん» コメントありがとうございます!応援のお言葉本当に嬉しいです。とても励みになります! (2022年12月18日 20時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ガスカ - 続き楽しみにしています。頑張ってください!応援してます (2022年12月18日 18時) (レス) id: 59f6634a23 (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ルーミアさん» コメントありがとうございます!主人公の過去については、ゆっくり紐解いていきますので、気長にお楽しみいただければと思います! (2022年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ルーミア - 昔に何があったのでしょうか気になりますね!次の更新頑張ってください!楽しみにしています (2022年12月5日 14時) (レス) @page15 id: 1c035b5819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2022年11月18日 8時