610.学秀side ページ37
「赤羽か?」
…すこし威圧的な言い方になってしまった。
Aにも気まずそうな顔をさせてしまった。
『や…、そうだけど』
……やっぱり。
ぐわっと胸の中に黒い感情が広がる。
駄目だ、彼女は何も悪いことはしてないんだから。
「…、そうか」
何とか声を絞り出して、自室へと向かう。
頭の中の嫌な考えを振り払うように、
机の上のテキストに向き合った。
もうすぐ期末考査だ。
今回もE組に負けるわけにはいかない。
…ふと時計を見ると、集中していた為か
少し時間が経っていた。
耳を澄ますと、トントンと誰かが階段を
上がってくる音が聞こえる。
Aか?いや、赤羽かもしれないな。
すると少しの間を開けて僕の部屋の扉が開いた。
「…は?」
聞き覚えのある声が聞こえ、後ろを振り向くとそこには。
「…赤羽…?」
あからさまに嫌そうな顔をした赤羽。
「最悪、浅野くんの部屋かよ…」
「それはこちらのセリフだ。
勝手に人様の部屋を開けておいて
その言いぐさはないんじゃないかな?」
少し苛立ったように言うと、
赤羽はため息をついて頭をかいた。
「Aの部屋ってどこ?
階段あがって左から二番目としか聞かされてないんだ」
1096人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神川夏海 | 作成日時:2021年2月28日 22時