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わぁぁぁあ、と
皆の声が遠くに聞こえる。
…まずい、やっぱりやめておけばよかった。
全く浮かない身体は、水底を這うように、
しかしものすごいスピードで流されてゆく。
「Aさん!?」
と遠くから殺せんせーの焦った声が聞こえる。
手を伸ばそうとするが、水から出た感触がしない。
やばい…これ確かこのまま行けば崖じゃ…。
あぁ…死んだな…。
殺せんせー…、カルマ…。
カルマの言うことちゃんと聞いておけばよかった。
ブワッと物凄い浮遊感と共に、身体が空へ投げ出される。
もう既に息もできない。
水も飲んでしまった。
どうしてこんなに冷静に思考が出来ているんだろう。
ひゅうううう、と風を切る音が耳元で聞こえる。
寒い、震えが止まらない。
と、ふわっと何かに絡めとられ、
そのまま一気に下の地面に下ろされた。
…ような気がする。
「…桜井、大丈夫か?」
と、聞き覚えのある声がする。
…誰?誰だ??
聞いたことあるものの誰か思い出せない。
大丈夫なわけ無いだろ。満身創痍だよ。
そう言いたいのに口が開かない。
目も開けられない。指一つ動かせない。
ふわりと誰かに優しく頭を撫でられた。
…そこであたしの意識はぷつんと途切れた。
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作者名:神川夏海 | 作成日時:2021年2月28日 22時