四輪 ページ5
顔を向けると、十にぃは言った。
「今日の夜、俺と近藤さんは上の接待があるから帰れねェ。
何かあったら総悟か山崎に言え」
「え……」
(山崎さん……?もしかして、無事だったの……?)
てっきりもう……。
驚いている私に気づいているのかいないのか、十にぃは「ごちそうさん」と立ち上がる。
「あ……」
まだうどんが残っている自分の丼を見て、私は慌ててうどんを流しこもうとする。
しかしそれを見咎めた十にぃに止められた。
「落ち着いて食ってろ。
俺ァ接待があるからもう行くだけだ」
「う、うん」
頷くと、十にぃは食堂の外へ出て行った。
.
食事を終えると、私は監察部屋に赴いていた。
(山崎さん、いるかな……)
ドキドキしながら声をかける。
「失礼します……山崎さんはいらっしゃいますか……?」
すると、中から「え……Aちゃん?」と声がかかって私は少し肩を揺らす。
すぐに襖は開き、山崎さんが顔を出す。
「どうしたの?もしかして何か……って、えぇ!?
Aちゃん!?なんで泣いてるの!?」
「あ……す、すみませんっ……」
泣くつもりなんか全然なかったのに、山崎さんの声を聞いたら安心したらしく、ポロポロと涙が出てきた。
あわあわしている山崎さんは立ち話もなんだと、私を部屋に招き入れてくれた。
山崎さんは仕事中だったらしく、文机には沢山の紙が置いてあった。
「すみません、お仕事のお邪魔をしてしまって……」
申し訳なく思って言うと、山崎さんは「全然大丈夫だよ、気にしないで」と優しく言ってくれた。
「それで……どうしたの?
何かあった?」
「あ、あの……」
私は言葉を選びながら、伊藤さんについた隊士の人たちから聞いた話を言った。
「あぁ……やっぱ俺死んだことになってたんだ……」
ちょっと疲れたように言う山崎さんに首を傾げると、山崎さんは少し意外そうに、怪訝そうに言った。
「えっと、それにしても……心配してくれたの?Aちゃん」
「それは、勿論」
迷いなく頷くと、「Aちゃんは優しいね!!!」と言って山崎さんがぶわっと泣き始めた。
どうしたのか、と思っていると、山崎さんは泣きながら話してくれた。
「皆酷いんだよ!?
俺死んでないのにお葬式とかしちゃってさぁ!
しかも犬と一緒に!
俺が犬のついでだよ?信じられる?!
普通逆だろ!?」
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時