十三輪 ページ24
(戻ってこないつもりではないし……少しいなくなるくらいなら、いいのかな)
そう思った私は、「分かった。用意しておくね」とそーくんに頷いたのだった。
.
次の日。
私が武州に帰るという話が屯所の中で出回ったらしく、(何故か)屯所中が騒がしかった。
朝食を食べに食堂へ行けば、中野さんを始めとしたおばさま方からのマシンガントークを食らった。
「Aちゃん、今日帰っちゃうんだって!?
何だいそれ聞いてないよ!?」
「何だってそんないきなり……!」
「いつ決まったの!?」
「え……えぇっと……」
わたわたしながら私は何とか言葉を返す。
「昨日、急に決まったんです。
いきなりですみません。
短い間でしたがお世話になりました」
そう言って頭を下げると、おばさま達はまた口々に言った。
「またいつでも帰っておいで!」
「待ってるからさ!」
「……!はい、ありがとうございます!」
おばさま達のところを抜け、朝食を食べる為に椅子に座ると、今度は隊士の方に話しかけられた。
「Aちゃん!今日帰っちゃうって本当!?」
「何でいきなり!?」
「俺たちのオアシスがあああああ……」
「ええっと……」
またも言葉に詰まっていると、丁度食堂に十にぃが入ってきた。
「おいオメェら朝から何やってんだ」
「ふ……副長!」
「副長は知ってたんですか!?
Aちゃんが帰っちゃうこと……!」
「あァ?」
「知ってたんなら何で教えてくれなかったんですかあ!」
「あの……」
私の話なのに私が置いてきぼりにされていることに気づき声を上げると、皆の視線が一斉に私に向く。
「その……決まったのが昨日だったんです……。
急に決まったことだったので……本当にすみません」
そう言って頭を下げると、隊士の方達は慌てたように口を開く。
「いやいやいや!謝らないでいいんだよ!」
「そうだよ!何か理由があったんだろうし……」
「またいつでも戻ってきてね!」
「はい……!ありがとうございます!」
隊士の方々の温かい言葉に、私は笑みをこぼして言った。
.
荷物をまとめた私とそーくんは、駅に荷物を預け、駅の周りの通りを一緒に歩いていた。
「そーくん、どこに向かってるの?」
「特に決めてねェ」
「そっか……」
そーくんはさっきからぷらぷらと歩いているだけで、特別何かのお店を探しているわけではなさそうだった。
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時