八輪 ページ10
私は十にぃに「ちょっと」と言い、近くの部屋に押し込んだ。
「ちょっ!?Aちゃん!?」
と焦ったような声を出したお兄ちゃんに、「ちょっとだけ待ってて」とだけ伝え、私も部屋の中に入る。
私達が入った部屋は誰かが普段寝起きに使っている部屋のようで、生活感があった。
私は少し申し訳ない気もしたけれど、
(少しだけ貸してください)
と心の中でそっと断り、十にぃに向き直る。
「いきなりごめんね」
「……用件はなんだ?」
余計なお世話だと、分かっていた。
でも、このままじゃ、皆報われない。
そーくんだって、ミツバ姉だって、……十にぃだって。
十にぃの鋭い視線を感じながら、私は口を開く。
「……ミツバ姉に、会ってあげて欲しいの」
「……」
十にぃは、何も言わない。
「……ミツバ姉が結婚することは、聴いた?」
「あぁ」
「……良いの?」
「何がだよ」
「……」
十にぃの様子から、十にぃは、あくまで知らないフリを貫き通すつもりなのだと、十分すぎるほど伝わってきた。
「……はぁ」
何も言わなくなった私に、もう用は終わったのだと判断したらしい十にぃが、部屋を出て行こうとする。
十にぃが、行ってしまったら。
今言わなかったら、きっと手遅れになる。
そう直感的に思った私は、咄嗟に十にぃの隊服の裾を掴んでいた。
振り返った十にぃと視線を合わせることができず、私は咄嗟に下を向く。
「……後悔しない?」
「……」
「……ねぇ」
「……」
「十にぃ……」
「……」
十にぃは、何も言わなかった。
それが十にぃの決意の固さを表しているようで、何故か涙が出そうになる。
「お願いだから……」
それでも諦めずに発した私の言葉は、どこか震えていた。
そんな私を見ていた十にぃは、優しく私の手を掴んで隊服から離させる。
その後、ぽんぽんと軽く私の頭を撫でて、襖を開けた。
「っ……ごめん」
思わず私は、去って行こうとする背中に言葉をかける。
十にぃの決意の固さは知っていたはずだった。
私が口出しできる範囲のことじゃないことも。
それでも。それでも、私は……
「それがオメーの優しさだろ?
知ってんだよ、ンなことは」
十にぃは振り返ってそう言うと、私の頭を撫でてから部屋を出て行ってしまう。
「お前も折角なんだから、楽しんどけよ」
という言葉を残して。
「……うん」
本当に十にぃに伝えたかった言葉は、
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時