三輪 ページ5
だけれど、私がそんなことを言ってしまったら、またミツバ姉は結婚を躊躇してしまうから。
だから、私は何も言えなかった。
「ミツバ姉、はい、これ。
薬とお水」
「ありがとう、Aちゃん」
薬を飲んだミツバ姉の背中を暫くさすっていると、ミツバ姉の呼吸は整ってきた。
「大丈夫?」
「えぇ、ありがとう」
ミツバ姉は笑って頷く。
「Aちゃんも、薬忘れないで飲んでね」
……あ
「う、うんっ」
「……もしかして、忘れてたの?」
「う、ううんっ!?
大丈夫だよ!」
ミツバ姉……笑顔が怖いです。
私も忘れずに薬を飲み。
「ミツバ姉、はい、毛布」
「ありがとう」
私達は寝る用意を始めていた。
お金を出せば寝台列車にも乗れるのだけれど、そんなお金はない。
唯でさえお兄ちゃん達に仕送りをして貰っているのだから、欲張りにはなれない。
「江戸に行く」と言えば、またお兄ちゃん達は余計にお金を送ってきそうだから、ミツバ姉と相談して、サプライズで行くことにしたのだった。
「ミツバ姉、椅子で寝るの辛くない?」
健康体な人なら兎も角、ミツバ姉は病人で。
……まぁ、人のことは言えないのだけれども。
「私なら大丈夫よ。
それに、普通の汽車で行くって言い出したのは私なんだから。
気にしなくて良いのよ」
「うん……」
そんなことを言われても、気になるものは気になってしまう。
そんな私を見て、ミツバ姉は口を開いた。
「それよりも、Aちゃんは大丈夫?」
「うん、私は大丈夫だよ」
そう答えてから、私は、「ちょっと厠行ってくるから先に寝てて」と言い残し、席を後にした。
個室に入り、私は激しく咳き込む。
「ハァ、ハァ……」
私が咳をするとミツバ姉が心配してしまうからと我慢していたけれど、かなりキツい。
武州を出て空気が変わったからかもしれない、と思いながら個室を出て席に戻る。
席に戻ると、ミツバ姉は毛布を上手く使いながら既に寝ていた。
(明日はきっと沢山歩くことになるだろうから、しっかり体力を温存しておかなくちゃ)
そう思い、私も毛布に包まり目を瞑る。
「コホッ、コホッ」
ミツバ姉が寝ているものだと思い込んでいた私は気付かなかった。
ミツバ姉が私を心配そうに見ていたことに。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時