二十七輪 ページ29
けれど。
「あー……いや」
坂田さんは面倒そうに頭を掻きながら言った。
「オメーはここにいろ。
身体弱いんだろ?無理すンじゃねえよ。
ほら、行くよ、ジミーくん」
「え、ちょっ、旦那!」
坂田さんと、坂田さんに引きずられて行った山崎さんを見ながら、思う。
(……私、そこまで身体弱くないと思うんだけど……)
側から見たら、私はそんなに弱そうに見えるのかな。
う〜ん、と考えていたけれど、お煎餅を食べているうちに、その美味しさに、
(……まぁ、いいか)
となってしまった。
.
暫くしてもなかなか坂田さん達が戻ってこないので、私は1人でミツバ姉の病室に戻る。
「あら、お帰りなさい、Aちゃん」
「うん、ただいま」
私が1人なのを見て、ミツバ姉が不思議そうに問う。
「あら……?
銀さんと山崎さんは?」
「何か話しをしに行ったよ。
2人がなかなか帰ってこないから、先に戻ってきちゃった」
「……そう」
ミツバ姉は何か思うところがあったのか、少し何かを考えていたけれど、直ぐいつも通りの笑顔になって言った。
「そういえば、さっきのおせんべい、どうだった?」
「とっても美味しかったよ!」
笑顔で答えると、ミツバ姉は嬉しそうに「そう。良かった」と笑ってくれた。
面会時間終了直前に坂田さん達は帰ってきて、私を屯所まで送ってくれた。
「わざわざ送ってくれて、ありがとうございます」
「いや、気にすンな」
屯所の前でお礼を言うと、坂田さんは何でもないことのように答えた。
「そういや、お前、明日もアイツのトコ行くの?」
「はい、そのつもりです」
私が頷き答えると、「じゃあ」と坂田さんはある時間を指定して、私に屯所前で待っているように言った。
「俺も行こうと思ってたからな。ついでだ」
……それは、送ってくれる、ということなのかな。
坂田さんの気遣いに頰が勝手に緩む。
「……ありがとうございます」
そんな私に、坂田さんは
「……何でお前ニヤけてんだよ」
と少し決まり悪そうに言い、私の頰を引っ張った。
「……お前のほっぺ、よく伸びるな」
「……失礼ですよ、坂田さん」
.
「あ、雨……」
次の日。
ミツバ姉の病室の窓から暗い空を見ていると、ぽつぽつと雨が降り出したことに気づく。
「あら、本当」
ミツバ姉も空を見上げて呟く。
何の音もしない病室に、雨の音だけが鳴り響いて、何だか居心地が悪い。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時