8 ページ36
堀川「はい、主さん、お漬物。」
「あ、ありがとう…。」
夕餉の刻となったが、やはり堀川は何も変わらなかった。
近侍として隣の席に座り、あれやこれやと世話を焼いてくれる。
加州「…何かあった？」
「えっ、あ、い、いえ何も…。」
加州「…ふーん。」
燭台切「はーい、みんな行き渡ったー？じゃあご飯にしよう。主〜。」
「…えぇ…。……その前に少しいいかしら…？」
食事の時は主である私がいただきますの号令をかけるのだが、皆がこちらに注目してくれるこの時が、ある意味チャンスだと思った。
「みなさんのおかげで借金を返済することが出来ました。ありがとうございました。」
両手をつき、頭を下げると短刀達を始め、喜ぶ声が聞こえた。
三日月「……そうか、良かったな。」
「えぇ、本当に皆さんのおかげです、感謝してもしきれません。」
堀川「……さっきのこと、皆にも言ってみたらどうですか？」
ハッとして顔を上げると、悲しそうに目を伏せる堀川が目に入った。
「……でも、あのことはまだ……あくまで可能性の話なので…。」
一期「何でもお聞きしますよ、どうぞ仰ってください。」
一期が摘み食いをしようとする乱の手を抑えながら柔らかに微笑んだ。
「それじゃあ……、
あくまで可能性の話ですが、……私、審神者をやめようかと…。」
そう告げると今までの穏やかな空気が一気に瓦解した。
清光「……本気？」
「考え中というか、何というか………っ、」
清光「A。」
顔を上げた清光の目はぞっとするほど真っ赤であった。心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚え、思わず胸を抑える。
三日月「……これこれ清光、落ち着け。A、今のような戯言を二度と口にするな。全く、冗談にしてはタチが悪い。」
「…へ？」
浦島「なぁんだ、冗談か！びっくりしちゃったよー。借金返したらいなくなるなんて思ってなかったし。」
長曾根「嬢ちゃん、鶴丸にでもなりたいのか？？それは勘弁してくれよ。」
三日月の言葉で皆はハッと我に返り、また和やかな雰囲気になった。
堀川「……ほら、ね？僕だけじゃないですから。いなくなって欲しくないのは。」
隣で堀川がボソッと呟いた。
結局、思い切ったはずの告白は煙のようにたちまちのうちに消え、何も変わらなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1698人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Pierce Hagenes - Home Loan Account (2022年12月19日 0時) (
レス) @page17 id: a4d2f91f49 (このIDを非表示/違反報告)
オーキッド(プロフ) - 稲荷さん» 初めまして。オーキッドと申します。この度はコメントをくださりありがとうございました。素敵な感想もいただきとても嬉しいです。今後もよろしくお願い致します。 (2018年6月7日 18時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
稲荷 - お初お目にかかります！稲荷です。この度、初めて拝見さして頂きました。徐々に刀剣男子達と仲良くなっているところを見ると自分も嬉しく思えます！ゆっくりと自分のペースでこれからも更新頑張って下さい！陰から応援しています！ (2018年6月3日 18時) (レス) id: d20f9b244b (このIDを非表示/違反報告)
オーキッド(プロフ) - 雪羅さん» 二作品も見ていただきありがとうございます。ゆっくりとですが更新していければいいなと思っております。これからもよろしくお願いいたします。 (2018年5月19日 23時) (レス) id: 500cf8b735 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅 - 冷徹少女の方を見ていて、この安寧もこの前見始めました。ブラックからどうやって溺愛や過保護に変わっていくのかが面白くて、一気に読んでしまいました。これからも頑張ってください！ (2018年5月18日 6時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：オーキッド
| 作成日時：2016年7月8日 7時
