【戦刻ナイトブラッド】想い、焦がれて【短編集】

建前と本心（伊達政宗） ページ19

風邪を引いた。

ボーっとする頭で書類を片付けていると...

「なにをしている。」

扉の方に政宗さんが桶を持って立っていた。

『あれ？政宗さん、どうしたんですか？』

「どうしたじゃないだろ。」

『これ終わらせないと、いけないんです...』

「おとなしく寝てろ。」

『や、休むわけには...』

「この書類を終わらせたいんだろ？なら俺がやっておく。だからお前は寝ておけ。」

『でもっ！』

「お前は総大将の命令が聞けないのか。」

この言葉にしぶしぶ布団へと戻る。

『冷たくて気持ちいい...』

政宗さんが水を張った桶に手ぬぐいを入れて絞り、額へと乗せてくれる。

「そうか。」

政宗さんは少し考えこんでから、

「おい、なにか食べたい物はあるか？」

と聞いてきた。

『すいません、食欲ないです。』

私の答えに政宗さんが黙る。

『あの、もしかして看病してくれるんですか？』

「そんなわけないだろ」

『ですよね。でもどうして？』

「それは...」

また、考えこんでしまった政宗さんを見上げる。

「さっきのようにお前が仕事をしないように見張る為だ。」

『そうですか...

でも、風邪うつるかもしれませんよ？』

「総大将が風邪を引くわけがないだろ。」

『そうですか。』

「ふん、とりあえずもう寝ろ。」

『政宗さんが看病してくれるなら、安心して寝れそうです。』

「看病ではない、見張りだ。」

『えへへ、そうでしたね。』

朦朧とする意識の中、

『手、繋いでてもいいですか？』

と、政宗さんに甘えてみる。

「お前は仕事をするなと言っているのか？」

『私が寝るまででいいんです。手を繋でいてくれませんか？』

「はあ、寝るまでだからな。」

手に温もりを感じながら、私は安心して眠りについた。

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