#7【胸臆】 ページ10
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___視界が半透明に歪んでいる
ぐちゃぐちゃな世界から目を背けた私は、己の精神の渦の中心を漂っていた。此処に来るのは何年振りだろう。其処には何故か“あいつ”が静かに佇んでいた
“……まさか こんな風に君と対峙するとは思ってもみなかったよ”
「…あなた……だあれ?」
頭では分かっているのに、何故だかそんな質問が口から零れる。その声は確かに私の物の筈だが、とても幼く聴こえる
まるで身体を乗っ取られているような奇妙な感覚を覚えた
“…A。目を背けてはいけないよ、自分と向き合わなくちゃ”
「……わ、わかんない……そんなの わかんないよぉっ!」
……そうか、これが本当の私なのか
無知で 被害者思考が強くて 醜くて 情けない子供のままの……これが、私なんだ
“そう、落ち着いて考えるんだ……知らなかったは臆病、気付かなかったは卑怯
世界は無知を許さないし、法則は不知を考慮しない…それに縋った所で君は救われないんだ”
知ろうとしない者は これからもずっと縛られ続ける、と重々しく しかし饒舌に語る“あいつ”は、私の全てを理解しているかのようにさえ感じた
___嗚呼そうか。私は安心してるんだ
「このまま……ずっと ここにいたいなあ」
“……それはいけないよ、A。言っただろう? 目を背けてはダメだって”
“君と僕は光と影のようなもの。身代わりになる事は出来ても、救う事は出来ない”
「うん……知ってる、もう全部…思い出したんだ……ずっと前から分かってたんだ」
漸く身体が意識と結びついた。自分の言葉が言える
「貴方はずっと昔から…私の事、守ってくれてたんだよね」
“あいつ”は何故か黙り込む
その表情は穏やかながら、瞳には透明の滴をいっぱいに溜めていた
「ずっと辛い思いさせて…ゴメンなさい……私が、弱いから…」
“それは違うよ”
あまりにもハッキリ言い切るものだから、少し驚いた。さっきまで大人しかったくせに何だ突然
“僕と君は一心同体…僕は君の一部だから。僕が持つ強さも、君の所有物さ”
言い放った言葉に、私は何だか寂しさを感じた
「そんなの……駄目だよ」
私は“あいつ”を…“エル”を柔らかく抱きしめた
「もう全部知ってるから、貴方の事。自分を卑下にしたり 独りで抱え込む必要なんて、ないの」
「貴方は独りじゃない……ね?」
エルが微笑み返した刹那、私達を神秘的な光が包んだ
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作者名:*てぃあ* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kariya652/
作成日時:2015年3月25日 12時