#4【憧憬】 ページ7
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「__…ちょっとは落ち着いたか〜?」
暫くしてから、バンは隣から覗き込むように尋ねてきた
「…うん。ゴメンなさい、貴方の邪魔になってしまって」
「どうせ 団ちょ達なら向こうから来るからな〜♪」
構わね〜よ、と何時もの軽薄な口調で言う彼に 私は一点だけ、不思議に思う事があった
「……ねえバン、貴方は…私が何故 貴方に付いてきたか、気にはならないの?」
ずっと思っていた
私は仮にも聖騎士…しかも バンの拷問を担当していた女。普通なら きっと、不思議に思う筈だ
…尋ねてから、後悔した。こんな質問、彼を困らせるだけでないか…言わなければ良かった
案の定、今 彼は困っているようで、何時もの軽薄な薄ら笑いは消えかかっている
少し考えるような素振りを見せた後、へらっと笑い 何かを言いかけた所で、医者の娘が突然騒ぎ始める
「っあ、あの…さっき言ってましたよね!!? その男、指名手配の…〈七つの大罪〉なんでしょ う!!!? だったら…」
「だったら___何?」
自分でも驚くくらい冷ややかな声が牢獄に響く。まるでその場の空気まで凍りついたかのようだ。そしてその声は、医者の娘の動揺や恐怖を増幅させたようで、娘は腰が半分抜けたように よろよろと走り出した
「お〜い♪ 何処行く気だ〜?」
「…怖がらせてしまったみたい。下手に走り回られても危険だし…一応、後を追うべきかしら」
しゃ〜ね〜な〜♪、と言いつつも別に気にしていない様子のバンは、医者の娘の後を追い始める
後を追う、と言っても娘とバンでは歩度が違いすぎる。娘は必死の形相で逃走しているが、バンは悠々と歩を進めている、といった感じだ
「た、助けて!!!」
娘が逃走の途中で誰かに会ったようだ
「あ、バン」「あ、団ちょ」
どうやら それはバンの知り合いらしい
「……って、団ちょって…まさか!!」
彼が『団ちょ』などと呼ぶのは 私の知る限り一人しか居ない
その呼び名を耳にした瞬間、私の脚は勝手に動いていた。“彼ら”が、この先に居る!!!
「___メリオダス!!!」
巷では〈憤怒の罪〉と呼ばれる大罪人にして、英雄・メリオダス
その仰々しい罪に反して、実際の彼は幼気ない少年の姿を持っている気さくな人物である…と私は思っている
「お、久々だな! A!」
相変わらず飄々としている彼に 私は昔から一種の憧憬を抱いていた
英 雄 の 姿 は 私 に は 眩 し す ぎ る よ う で
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作者名:*てぃあ* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kariya652/
作成日時:2015年3月25日 12時