#15【混迷】 ページ19
・
・
・
「___…、…風が冷たくて、気持ちいいわね」
出来るだけ動揺を悟られないように、気丈に微笑んでみせる。…しかし、目の前の彼──キングの表情は、固いままだった
「…ふう……用件は何? こんな夜更けに連れ出して…貴方はもっと女心を理解した方がいいわ」
「A」
少し高めの、変声期前の少年のようなアルトボイスが 静かな夜に響く
「君は……何故、此処に居る?」
「……あら、ご不満かしら」
「そうじゃない!!」
彼がこんな風に大声を上げるなんて、予想外だ。一体何だと言うのだろうか…私が此処に居る事を、否定するのだろうか……なんだか、怖いよ
“大丈夫。彼はそんな人じゃないだろう?”
久々の声が、頭の中に直接 語りかける……今まで鬱陶しかった“エル”の事も、今は愛せる
けれど、久々の癖に突然そんな事を言われても、何ていうか…うーん……
「煩いわよ、エル……分かってるから、大丈夫」
静かに制止してみるが、エルは反論する
“君は1度不安になると、追い込まれる……そうなる前に、僕が守る”
「あら、口説いてるの? 心配は無用よ…と言いたい所だけれど まあ……頼むわよ、私の事」
傍から見ると、きっと私は独り言の大きい奇妙な人間なのだろうか。試しにキングに目をやると、先程までと変わらぬ深刻な表情をしていた。彼はあまり気にしないらしい
「…と、本題に戻るわね……ええと、何故 私が此処に居るか…どういう意味かしら」
「君は…オイラ達と違って、王国を追放されてないのに…何故、団長達と一緒に居るんだい」
「ぷっ……っふふ、」
思わず吹き出してしまった
「そんな事?」と尋ねると、キングは少し怒気を含んだ声を上げる
「オイラにとっては そんな事なんかじゃない!! だって君は王国聖騎士じゃないか!!」
「だから何?」
吹き出したのとは一転、静かに告げると急に黙るキング…やっぱり変わってない、臆病さん
「私が此処に居るのは好奇心、それと暇潰し」
端的に答えようと試みたが、彼にはあまり伝わらないようだ
「貴方達が去って…退屈で仕方なかった。正直、聖騎士とは馬が合わなかったからね
監獄に厄介払いされて…其処にメリオダス達が現れたら、付いて来ない訳がないでしょう」
「私の永遠の悠久を満たせるのは、貴方達だけなのよ」と微笑むと、キングは戸惑いつつも理解したようだ
「……良かった…Aッ…会いたかった…」
気づけば私は、彼の華奢な腕の中に居た
+ + + +
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:*てぃあ* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kariya652/
作成日時:2015年3月25日 12時