才能 【ヒカル】

14. ページ14

ヒカルが運転する車の助手席に乗るのはそう珍しいことではない。
まえっさんなんて数えきれないほどあるし、動画でコラボした人、あたし自身も何度かは乗っている。



けれども運転している人というのには何やら魔法かエフェクトがかかるようで、普段の何割増かでかっこよく見えるのだ。
夜だと尚更。



ヒカルも例外じゃなかった。



東京のしかも六本木という大都会で平然と車を走らせている姿には、上手く説明が出来ないけど胸がキュンとなる。
普段は毒づきながら喋りまくるYouTuberなのに今この瞬間は1人の男性だからかもしれない。



この空間であたしだけが見ているからかもしれない。



『俺そんなかっこいい？』


｢へ？｣


『いやこっちばり見とるから笑』



はははっとノールックで笑っている。
うん、笑顔も夜の光に照らされると増して可愛く見えるんだな。



｢かっこいいよ｣


『え？…せやろ？』



どうせ隠してもいじられると思い素直に吐き出した。
一瞬戸惑ったように見えたけど、それも気のせいだと思うくらいヒカルの返しは早かった。



｢ていうか何で居たの？大食いは？｣


『終わってから来たで』


｢1回帰ってわざわざ車取りに行ったの？｣


『せやで』


｢なんで、笑｣



2時間しかないのに。
大食いの店が近かったとは言え、いつもなら店に入って出るまで2時間で終わることはない。
だいぶ急ピッチだったはず。



それで納得のいく撮影は出来たのだろうか。
あたしに文句を言う権限は何一つないけども。



『A1人で帰んの危ないやん』


｢いやタクシーあったし…｣


『ええねん運転の練習もしたかったし』



練習…
結構もう乗ってると思うけど…



まあせっかく来てくれたしお金も浮いたしあんまり否定しても好意を拒否することになるからこれ以上は言わないでおく。



社長自らタクシーしてくれるってよく考えたらすごいけどね。

15.→←13.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す