才能 【ヒカル】

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大量の人間を後ろに従えたまま平然と隣に来る。
さすがというか何というか。



おかげで何人かに名前を呼ばれてしまった。
知ってくれてるのはもちろん嬉しいけどガチプライベートでカメラも他のメンバーもいないからちょっと恥ずかしい。



｢え、俺Aちゃんの後ろ座ってた…｣


｢マジで？いいなあ！｣


｢ヒカルさんAちゃん、よかったら写真…｣



携帯に何やら打ち込んでる人も沢山いるし、きっとツイートやストーリーでヒカルがここにいるのが拡散されてしまう。



こういう時期なので握手はしないものの、写真やらサインやらが大量に求められる。
ある程度それに答えているヒカルは正しくプロっぽい。



｢Aちゃん！写真撮ってほしいです！｣



さっきの白金お兄さんとは違う黒髪のお兄さんが横に並んできてすぐ携帯を構えた。
思わず反射的にピースしてしまったが、何だか黒い物がバサッと目の前を通って画面が見えなくなる。



『俺らそろそろ帰らなあかんしごめんけど写真また今度にして』



それはヒカルのコートであり、頭の上にかけられたんだと分かった。
冷えた体が少しだけ暖かくなる感覚。
ありがたやありがたや。



コートの中からちらっとヒカルを覗く。



『寒いんやろ、着とけ』



向こうの方でひゃーと小さく女子の歓声が聞こえた。
確かに目を閉じて脳内再生すると、少女漫画で出てくる台詞かもしれない。



さすがドS王子。
ファンのツボを抑えてる。



さて、王子の命令を受けたのであたしはなんの躊躇もなく袖を通した。
こう言うと変態みたいだが、さっきまでのヒカルの体温がそのまま移ってきたようでとても暖かい。
被るのと着るのとでは大違いだ。



『帰んぞー』


｢帰りまーす｣



ファンの人達がばいばーいと言いながら道を開けてくれる。
韓国アイドルとかジャニーズとかのファンはどこまでも付きまとってくるイメージがあるけど、ヒカルのファンは礼儀とマナーがなっているみたい。



いいことだな。



それにしても…
こんなとこにマセラティで来たら目立ちすぎるに決まってる。

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