ク ズ と カ ス . 【赤葦京治】

ス ページ5

「何を？」



涼しい顔でこちらを一瞥する赤葦。

神様に祈る。お願いだから、私の悪い勘が合っていると。

好きな人が振られることを望んでいるなんて、最低な願い。ほんと、カス。




「七瀬さんと佐山くん、付き合ったんだってさ」



そう言って、ちらりと見る。

無表情に影がかかったのを見て、喜びを感じた私はやっぱりゴミカスだと思った。

七瀬さんに彼氏ができて嫌な顔するってことは。
こいつの好きな人は、きっと、きっと…七瀬さん。



その彼女に恋人ができたんだから、赤葦は、失恋したってこと。なら、私にもチャンスありますか。


こんなにも好きなのに、好きな人の幸せを願えない。どうかお願い、好きだから。ーーー好きだから、私に、振り向いて。
絶対、幸せにするから。





「そっか」



そんなふうに、何かを殺したように笑う赤葦を見たくなくて、咄嗟の事だった。




「もし失恋したら、新しい恋探そうよ」


半分、私の期待が入ってるこの言葉に、気づいたかな。
うん、って頷いてくれたら私にもチャンスはある。
なら私とどう？なんて言えないけど、もっと仲良くなって、それから、好きになってもらうんだ。




そんな私の淡い希望を、馬鹿にするかのように、赤葦は綺麗に笑った。




「出来ないなあ」



ガツン、と頭の上に何かが落ちたかのような衝撃。
ポカンとしていると、優しい声が上から降ってきた。




「誰でもいいって訳じゃないし、もし失恋してもその子を好きでいたい」

「……ふーん」


「それに好きな人が幸せそうなら、それでいいんだ」




好きな人の幸せを願えない私と、反対の赤葦。

お前じゃダメだって言われたようで…私には、赤葦の好きな人の、代わりにはなれないらしい。


溢れ出そうになる感情を押しとどめるようにパチパチと数回瞬きをして、拳を握った。




「ほんとに、好きなんだ」



せめて笑顔で、と思って笑った顔はきっとおかしい。表情と気持ちがリンクしてないから。




「うん」


赤葦が1度、大きく目を瞑った。
何かを堪えるように、力強く。

私なら、そんな顔させないよ。それを言いたくても、赤葦は私を求めてない。



「…私も好き」

「……は、」



嘘だよ。…なんてうそ、ほんと。
だからそんな風に眉をひそめないで。



「私も、大好きな人がいるから、わかる」

「…誰」



アンタだよ。そう言えたら楽なのに。
そんな気持ちを一蹴するように、二ヒッと笑った。




「かーれし」



…なんてね。

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