ク ページ1
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絶対に叶わない、恋をしている。
「赤葦」
「なーに、阿南」
私が名前を呼ぶと、くるりと振り返る愛しい人。
おにぎりを食べながらこちらを見る彼に、笑いが零れた。
まだ一限が終わったばかりというのに、彼の食欲には底がないらしい。
「まーたおにぎり?」
「お腹空いたから…それより、」
アカアシとアナン。
2年連続で同じクラス、出席番号が前後ということで、私と赤葦は仲良くなった。
普段から前に座る赤葦に声をかけてはちょっかいを出している。
呼ぶと、キョトンとした顔で振り返る彼が好きだ。なんだか、特別感がある。
それより。そう言ってからおにぎりをゴクリと飲み込み、私の方へ手を伸ばす赤葦。
ニコリともしないで近づく顔に、ドキッとする。
……心臓に悪い。
「な、なに」
「寝ぐせ」
私の頭をゆっくりと撫で、満足げに頷くとまた手に持っているおにぎりに視線を落とす。
じんわりと、顔が熱くなる。
ああ、やだ。はやくこんな熱、引いてしまえ。
赤葦は、きっと私の顔が赤くなっていることに気づいていない。それだけが救いだった。
もし、この気持ちが知られたら。
そう思うと恐ろしい。今の関係が壊れることもーーー赤葦に、ウソがバレることも。
「阿南」
ハッとして顔を上げると、口元に弧を描いた赤葦が見えた。
その表情が好き。ていうか赤葦なら、なんでもいい。
けれどそんなことは言えない。全て、プライドの高い私のせいだけれど。
「最近彼氏とは、どう?」
「……順調〜」
ピースを作って笑うと、そっか、と言って前を向いてしまう私の好きな人。
またひとつ、嘘を重ねてしまった。
赤葦には、好きな人がいる。らしい。
噂では、相手は大人の女性であったり、他校の後輩であったりと様々。
1度赤葦に聞いてみたことがある。
『好きな人いるの?』そう言うと、あっさり『うん』そして『初恋の人』だそうだ。
そんなの、勝てるわけがない。
あっさりと認められたのが悔しくて、正面切って「相手はお前じゃない」と言われたような気がして、つい、ついてしまったのだ。あとから私を苦しめる、最悪なウソを。
『私も最近彼氏出来てさ!赤葦に相談してもいい?』
今思えば、どうしてそんな身も蓋もないような事を、と思う。
多分それを言った時点で私は赤葦から恋愛対象外。
興味なさげにふーん、と相槌を打った赤葦を見て、目の前が真っ暗になった。
私はこの不毛な恋を、終わらせたい。
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かふぇおれ(プロフ) - 千尋さん» 完結まで、ありがとうございました!心温まるコメント、感謝です。これからもどんどん執筆していこうと思いますので、もしお時間いただけるのであれば、稚拙ですが読んでいただけると幸いです! (2020年8月27日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - AZUさん» コメント、ありがとうございます!そのように言って頂けて、嬉しくて踊りだしそうです笑 面白いかな、この終わり方、と思って書いたので、意図が伝わったようでとても嬉しいです笑 完結まで、ありがとうございました! (2020年8月27日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
千尋(プロフ) - 完結お疲れ様です。すごい面白かったです!素ばらしい作品をありがとうございました。これからも頑張って下さい。 (2020年8月26日 22時) (レス) id: 1da978a986 (このIDを非表示/違反報告)
AZU(プロフ) - すごい面白かったです!もう終わり方が面白すぎます!こんなにいい文章をかけるなんて尊敬します!すごいよく分からない文になってしまいましたが最後に、素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年8月26日 21時) (レス) id: 4f1928e237 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - たにしさん» コメントありがとうございます!なななんと、嬉しいお言葉を...!!完結しましてひとまずほっと一息です笑 ここまでありがとうございました!! (2020年8月26日 20時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かふぇおれ | 作成日時:2020年7月18日 21時