検索窓
今日:9 hit、昨日:38 hit、合計:192,202 hit

いつもの四人 ページ46

隠し撮りなんて、するもんじゃない。
ひとつの教訓として、胸に止めておいて欲しいと思う。





プシューという音がして、アナウンスと同時に人が流れ出ていく。

電車内に残ったのは、チラホラといる稲高生、会社員や老夫婦。
その中に、背の高い黒の髪の毛を見つけた。



ふふ、今日もかっこいい。

カバンから携帯を取り出して、無音カメラを起動する。



彼めがけてシャッターを切ると、そこには。







「A」


「!…おはよ、角名くん」





液晶に映る姿を見てドキッとして、名前を呼ばれた方向を向く。

大人っぽくふわりと笑う私の恋人を見て、照れてしまう。私の、こいびとだ。





「まーた撮ってたの?」

「はは…なかなか癖、抜けんくて」





こちらを見て心底嬉しそうに笑う、画面の中の角名くん。これは永久保存版だな、と思って心がぽかぽかする。

へらり、と笑うと角名くんは私のほっぺをつまみ、餅のように伸ばした。





「い、いひゃい、ふなくん」

「ははっ、きもちー」




楽しげに笑う姿を見て、強く言えない。

まあ、角名くんが楽しいならいいや。ほっぺにちょっと痛みを感じるくらい、どうってことない。



ガタン、と車内が揺れる。
それと同時に身体がふらつき、後ろへ。


倒れる、と思った瞬間、トンと何かにぶつかって支えられた。






「おっ、と…大丈夫か?」

「ごめんなさい…って、宮くん!」





慌てて後ろを振り返り謝ると、そこには宮侑、そして宮治がいた。




夏休み。

角名くんと付き合いはじめた日、きちんと、双子には報告をした。それから、宮侑にもちゃんとお礼を。


宮侑があの時、私の背中を押してくれなかったら、きっと私と角名くんはすれ違ったままだったと思う。

ありがとうと言っても言い足りない。
彼の気持ちを知っているから、余計心苦しかった。






「なんや、またAは盗撮しとったん?」

「お前も懲りんなあ…」






なんでもないように宮侑が言って、それに宮治が同調する。

呆れたような声音を聞いて、前に戻れたように感じて嬉しくなった。
電車の中で四人。

初めて出会った日もそうだった。全ては、ここから始まった。






「今度、宮くんらも撮ったるよ」

「勘弁せえ!」








宮侑が大声で否定すると、耐えられなかったようにみんなで笑う。 いつもの、四人で。




それが嬉しくて、楽しくて、ちょっぴり涙が出た。

隠し撮りしているところを見られました。→←初恋



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (390 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
869人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ruu - なんかもう、、いろんな感情が混ざり合って苦しくて苦しくて、、途中から大号泣でした、、笑 言葉選びがすごく素敵な作品で思わず感情移入しすぎてしまいました…素敵な作品ありがとうございました! (3月18日 5時) (レス) @page47 id: 0c6a3d0620 (このIDを非表示/違反報告)
fjkkork(プロフ) - 本当に少女漫画見てる気分になりました!号泣ものです。素敵な作品をありがとう‥ (2021年1月2日 19時) (レス) id: 2a56967181 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うわーーーギュンッギュンした、、ツムと結ばれて欲しかった〜泣 (2020年11月13日 5時) (レス) id: e3a365bbc6 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - ばーどさん» 恋愛の苦しさと楽しさを含めた作品にしたかったので、そう言って頂けてとても嬉しいです。ばーどさんが涙してくれたのなら、私も一緒に涙を流したいです笑 ここまで読んでいただいきそれと心温まるコメント、ありがとうございました! (2020年8月9日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - ユノさん» 眉毛を下げる笑笑 とっても素敵な表現で、ぜひ小説で使いたくなりますね笑 ここまで読んでいただき、それと嬉しいコメント、ありがとうございました! (2020年8月9日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かふぇおれ | 作成日時:2020年5月28日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。