臆病な私と、 ページ40
「…そう出来たら、良かったのに」
「なら、そうしてよ」
独り言のつもりで言った言葉に、角名くんが素早く返す。
そうしてよって、なに。
もし私が、角名くんも私のことが好きだって誤解したら、どうするの。
私が告白しても、うんとも言ってくれなかったくせに？
そう思うと段々怒りがこみあげてきて、行き場のない感情のはけ口を探す。
でもそんなもの、どこにもない。
「私だって、そうしたいよ」
「じゃあなんでそう思わないの？」
なんで。
それを私に言わすのか、角名くん。
私だって、気づきたくなかった。
二人が付き合っているのかもだなんて、思いたくない。
ほんとに、ひどい人だ。
だって、あなたの好きな人は私じゃないでしょう。
さっきまで煩わしかったセミの鳴き声が聞こえない。
耳から通り抜けていく。
聞こえるのは、私のドクドクと音を立てる、心臓の音だけだ。
この音が角名くんに届いていなければいい。
そう思うほど臆病で、しかもそれを隠したいと思うんだから、馬鹿げてる。
「Aに、言わないといけないことがあるんだ」
真剣みを帯びているその声は、綺麗なイントネーションで、しっかりした意志を持っていた。
「…いい、聞かない」
「だめだよ」
もし、相崎先輩と付き合うことになったんだ、なんて言われたら。
私の臆病で、無けなしの自尊心が、崩れてしまう。
はやく、早く逃げてしまわなければ。
このまま角名くんをおいて、走り出せ。
拘束から抜けようとするけど、抱きしめられている力は強くてどうにも離れられない。
「知りたくないよ」
「それでも、聞いて」
ジタバタと暴れてみるけれど、力が弱まる気配はない。
どうして私に、そのことを言おうとしてくるの。私の心を殺すようなまね、するの。
嫌だよ。角名くんが他の人のものになったって言われるのが、いやで仕方ない。
虚しくて、仕方ない。
「ッ、聞かないから！」
あーあ、声が震えちゃった。泣きだしそうな声になってしまった。
お願いだから、それに気づかないで欲しい。
でもそんな淡い期待も、すぐに強められた腕の力の意味を理解して、砕かれた。
私が泣いてしまいそうなのに、気づいたんだね。
でも大丈夫、もう泣かないから。安心して。
「A…好きだよ」
ギュ、と抱きしめられると、その声を聞くと、またどこか遠くでセミの鳴き声が聞こえた気がした。
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ruu - なんかもう、、いろんな感情が混ざり合って苦しくて苦しくて、、途中から大号泣でした、、笑 言葉選びがすごく素敵な作品で思わず感情移入しすぎてしまいました…素敵な作品ありがとうございました！ (3月18日 5時) (
レス) @page47 id: 0c6a3d0620 (このIDを非表示/違反報告)
fjkkork(プロフ) - 本当に少女漫画見てる気分になりました！号泣ものです。素敵な作品をありがとう‥ (2021年1月2日 19時) (レス) id: 2a56967181 (このIDを非表示/違反報告)
ピ(プロフ) - うわーーーｷﾞｭﾝｯｷﾞｭﾝした、、ツムと結ばれて欲しかった〜泣 (2020年11月13日 5時) (レス) id: e3a365bbc6 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - ばーどさん» 恋愛の苦しさと楽しさを含めた作品にしたかったので、そう言って頂けてとても嬉しいです。ばーどさんが涙してくれたのなら、私も一緒に涙を流したいです笑 ここまで読んでいただいきそれと心温まるコメント、ありがとうございました！ (2020年8月9日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - ユノさん» 眉毛を下げる笑笑 とっても素敵な表現で、ぜひ小説で使いたくなりますね笑 ここまで読んでいただき、それと嬉しいコメント、ありがとうございました！ (2020年8月9日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かふぇおれ | 作成日時：2020年5月28日 17時
