走れ、はやく ページ36
「ーーー行ってくる」
離された右手に尾をひかれながら、走り出す。
ありがとう。出会ってから数ヶ月、本当に楽しかった。
電車で隠し撮りをしているだけだった私を、こんなところまで連れ出してくれた。
宮侑の横を通り過ぎる時、ふと、声が聞こえたような気がした。
『中原さん、角名のこと隠し撮りしとったやろ』
どれくらい、前のことだろう。
ああ、楽しかったなあ。出来るならずっとこのままがいいなんて、我儘だろうか。
ふわ、と風が吹いたと同時に、私は宮侑を追い越した。
『Aは照れ屋さんやもんなあ』
角名くんと、２回目の会話のとき。電車の中で宮侑が放った言葉。
照れ屋さんじゃないって。
角名くんにそんな嘘、通じてなかったと思う。
『お前、なんやねん、そのカッコは』
練習試合に応援に行った時、適当な服で来て、怒られたなあ。
だから私、夏祭りに浴衣で行こうって思ったんだよ。
『やったなあ宮侑！』
『俺ら天才や！！』
テスト終わって、双子二人とも赤点なくて、相当喜んだ。あの時は今年一、嬉しかったかも。
仲も深まった気がして、幸せだった。
『ーーーAが、俺らにつきまっとるんやない』
ひどく、優しい声がした。
もちろんほんとに聞こえたわけじゃない。
耳にこびりついて離れない。この声が。
狭い教室の中で、息ができなくて泣いてしまいそうな私を救った、優しいもの。
『俺らが、Aに付きまとっとるんや』
なんだそれ、って笑ってしまいたかった。
友達やろ。付きまとっとるとか言わんでって、今ならハッキリ言えるよ。
「はっ、はあっ｣
感謝の代わりに、私も勇気を出す時が来た。
チンケな言葉だ。
小説や映画で使い古された、そんな言葉を私は今日彼に吐く。
たった一言が言えなくて、宮侑、宮治にはいっぱい迷惑をかけた。
だからその分も、頑張らせて。
体育館のドアを引くと、キィ、と古びた音が鳴った。
自主練をしていたであろうバレー部の部員達が、こちらをちらりと一瞥する。
多くの人の視線が刺さり、少しだけ萎縮した。
辺りを見回す。
そうしてその中に、私の好きな人のソレを、見つけた。
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ruu - なんかもう、、いろんな感情が混ざり合って苦しくて苦しくて、、途中から大号泣でした、、笑 言葉選びがすごく素敵な作品で思わず感情移入しすぎてしまいました…素敵な作品ありがとうございました！ (3月18日 5時) (
レス) @page47 id: 0c6a3d0620 (このIDを非表示/違反報告)
fjkkork(プロフ) - 本当に少女漫画見てる気分になりました！号泣ものです。素敵な作品をありがとう‥ (2021年1月2日 19時) (レス) id: 2a56967181 (このIDを非表示/違反報告)
ピ(プロフ) - うわーーーｷﾞｭﾝｯｷﾞｭﾝした、、ツムと結ばれて欲しかった〜泣 (2020年11月13日 5時) (レス) id: e3a365bbc6 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - ばーどさん» 恋愛の苦しさと楽しさを含めた作品にしたかったので、そう言って頂けてとても嬉しいです。ばーどさんが涙してくれたのなら、私も一緒に涙を流したいです笑 ここまで読んでいただいきそれと心温まるコメント、ありがとうございました！ (2020年8月9日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇおれ(プロフ) - ユノさん» 眉毛を下げる笑笑 とっても素敵な表現で、ぜひ小説で使いたくなりますね笑 ここまで読んでいただき、それと嬉しいコメント、ありがとうございました！ (2020年8月9日 19時) (レス) id: 8f8064a962 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かふぇおれ | 作成日時：2020年5月28日 17時
