アルジャーノン (ページ9)

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『なるせくんの家はまだ向こうなの？』

　
一本の通りに沿って建っている私の家の向こうにも

家がたくさん建っている

「いや向こう」

『え、ちょっと待ってとっくに過ぎてんじゃん
　
ごめんなんか』

　
ありがとうと言うべきだったか

でもそう言うとわざわざ送ってくれたと

自惚れている感じがして謝ってしまった

「なーんでAが謝んだよ
　
俺が勝手にやったこと」

『まあ確かに』

「おい確かにって言うな笑
　
もう謝っとけお前ずっと」

ずっと楽しい

気まずい空気なんてそんなものどこにもなくて

そんなこと思いながら今も私は笑ってる

これって別に好きとかじゃない

ただ一緒にいたいなって思った

ほんとにそれだけ

『なるせくんってさ天才だね』

「いやまあそうね

　違うけどね
　
どこにあったんその天才要素」

『えーまあそう言われちゃうとねわかんない』

「じゃあちげーじゃん
　
もーなんなのほんとにまじで」

「ごめんなんか楽しいわ

　Aってもうなんか、さ、
　
ごめんね失礼なこと言うよ多分
　
あのさ寡黙であ、はいとかそんなことしか言わない

クソおもんな人間だと思ってたわ」

　

確かに彼の言ったことは結構失礼だったけど
　
楽しいという言葉が私にとっては何よりも嬉しかった

私と同じことを思ってくれていたことが嬉しかった

　
　
『それブーメランだよ
　
私だってなるせくんのことクソおもんなカッコつけ

人間だと思ってたよ』

　
「おいおかしいだろ
　
なんか増えてるし」

「じゃ、そろそろ解散ね」

『うんそうだね

　あ、明日は私がなるせくんの家の前までついてくから』

「あーまあ俺は全然いいけど全然いいんだけどさ
　
　3時間かかるよ？いいのなそれでも」

　
『えうそでしょそれは』

「うんうそ｣

解散って言ったはずなのに家の前なのに

帰りたくないと思った

「じゃ来て明日
　
俺の家の前まで」

　
そう約束した

「あと、なるせくんってくん言うのめんどいから

なるせって呼んで」

　

それも約束した

別になるせがなるせくんって呼ぶわけじゃないんだから

くんのままでもと言ったら
　
はいそうやって揚げ足とっちゃうのねと軽くあしらわれた

『じゃあほんとに帰ろっか』

「そうね
　
じゃ、バイバイ」

　
『バイバイ』
　
　
　