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少しだけ俯く私をさおりは不思議そうに見ていた
「なんかよく分かんないけどさ
素直になること」
「それだけだよ」
じゃあ部活行くと言いながら手を振って出て行くさおりを
私は呆然と見ていた
『素直になること…』
そう呟いた声を蝉がかき消した
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【8月19日 18時 打ち上げ開始予定】
『花火19時からの予定らしいけど18時に藤沢駅待ち合わせでも
大丈夫?』
ホームページで時間を確認してからなるせに
LIMEを送った
「あーねいいよ」
「Aさ、もしかして浴衣着てくる?」
『うんその予定』
「おっけ了解」
ドキドキする内容なのに淡々と話が進められていった
なるせも浴衣を着てくるのだろうか
(大丈夫かな私)
あと3日後に迫った花火大会
いつも通りにしてればいい
普通の友達なんだから
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【本日〜花火大会〜19時より打ち上げ開始 片瀬海岸にて】
駅に着くと浴衣を着た多くの人が江ノ電の方に向かっていく
「あと2分くらいで着く」
とメッセージが来た
『待ってる』
そう返事をした
なるせらしき人を背伸びをしながら探す
「ごめんお待たせ」
石鹸のような優しい香りがした
『あ、うん』
「行こっか」
浴衣を着ているなるせがなるせじゃないみたいで
平常心どころじゃなかった
江ノ電を待っている間
いつもどんな風に話しているか忘れて
なにを話そうかと周りを見ながら話題を探していた
「かわいい」
『え』
「浴衣似合う」
まさかそんなことを言われるとは思ってもみなくて
でも素直に嬉しかった
『ありがと』
『なるせも、似合うね浴衣』
「ふふ、ありがと」
褒め合いっこをしている私たちが面白くなったのか
ほんの少しだけなるせが笑った
江ノ電を待つ人も多く、なるせと私の距離も
いつもより近かった
電車に乗る時は奥に立たせてくれたり
私の足元を見て擦れてないかをさりげなく確認してくれたり
歩くスピードをいつもより遅くしてくれたり
『なるせモテテク上級者だね』
「まともな会話の一発目がそれでびっくりしたわ」
『だってそう思ったから』
「…優しいとこ、変なとこ、人を笑顔に出来るとこ」
『…?』
突然何を言い出すんだと思いなるせを見上げる
「これAの良いとこ」
「言ったやん前に。自信あげるって 」
『悪口入ってた』
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作者名:メル | 作成日時:2023年4月2日 17時