アルジャーノン (ページ2)

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『失礼します、三浦先生いらっしゃいますか』

部活指導に行ったのか先生の数は思ったよりも少なく、

三浦先生もいなさそうだった

「ごめんね、三浦先生いらっしゃらないみたい

たぶん部活の方に行ったんじゃないかしら」

優しい顔をした古文のおばさん先生がそう答えてくれた

『あ、そうですよね…ありがとうございます』

『失礼しました』

それぞれの部活のユニフォームを着ている

陽キャのように見える人たちとすれ違いながら

校庭の方に向かった

(さおりは体調不良ってことにするか)

さおりは陸上部でたしか顧問の三浦先生は厳しかったことを

今思い出してしまった

トラックの真ん中に立ってウォーミングアップを

している生徒たちを鋭い眼差しで見ているのが見えた

(最悪…昨日運動靴持って帰っちゃったんだよな)

　

校庭には緊急時以外はローファーなどでは

踏み入れてはいけないという

いるのかいらないのかよく分からない校則があったため

下駄箱から少し出たスロープみたいなところから

先生を呼ぶしかなかった

　

『三浦せんせーーーー！！！』

帰宅部で、陽に見える陰の私にはこんな大声を出したのは

久しぶりで少し気持ち良かった

思った以上に声が大きかったのか一回でこちらを向いて、

部長のような人に何かを言い残してからこっちへ向かってきた

　

案外先生はよく言えば素直だったのかすんなりと

私の言ったことを聞き入れてくれた

　

「気をつけて、さようなら」

『さようなら』

　
緊張から解放されて浮き足立ってしまった私は鞄の脇に

入れていた折り畳み傘を落としたことに

気が付かなかった

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「そんでさー、めいちゃんがこけてっておい聞いてる？

なるせ」

「いやちょっと待って

なんか落ちてる」

「あ、ほんとじゃん

名前とか書いてないの？」

　

「…んーいや笹って書いてはあるけど」

「笹？名字かなんかか」

「多分そうね」

「どうするかねー、でもなるせ持っとけよそれ」

「いやなんでだよ

職員室とかに届けた方が良くね？」

「もったいないでしょ運命の出会いかもじゃん」

「別に求めてないのよ

でも職員室に行くのも気まずいから一応持っとくか

ここに落ちてるってことは同学年の可能性高いし」

　
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　葵成瀬
　月城あらき