イナシリ短編集 (ページ13)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:9,343 hit

菜花親子【diary】ページ13

幼稚園くらいのフェイで黄名子が生きてて、黄名子誕生日です。
ーーーー
フェイ視点

「お母さんなんて嫌いだ！」

「フェイ、ちょっと待って！」

思わず家を飛び出した僕。

でも、僕は悪くないし、悪いのはどう考えてもお母さんだ。

お母さんはお仕事し過ぎだ。

お母さんの誕生日くらい、家族でゆっくり過ごしたいのに。

ー10分前ー

「ねーねー、お母さん、あのね！」

「フェイ、お母さん今お仕事してるの。だから、お話は後でね。」

いっつもそうだ。

お仕事お仕事って。

僕の事、大事じゃないのかな？

ー今ー

だからお母さんの声も聞かずに家を飛び出した。

走った先、辿り着いたのは…

父さんの仕事場の手前だった。

父さんは優しい。

お仕事が忙しくても、土日は必ず休んで、僕と遊んでくれる。

そろそろ4時だから、今は休憩時間のはず。
そしてその休憩時間には、毎回すぐそこにあるコンビニで買い物をしているらしいので、ここで待っていれば父さんが来るはず。

「どうしたんだ、フェイ。1人なのか？母さん心配するぞ。」

懐かしくて優しい父さんの声だ。

「父さん、お母さん酷いよ。お仕事お仕事って、僕よりお仕事の方が大事なんだ！」

「そっか。でも、母さんはフェイの事、嫌いな訳じゃ無いぞ。」

「え？」

「しょうがないな。ほら、こっち。」

会社の入り口みたいな広い所の椅子に座り、父さんは何かノートみたいなものを取り出した。

「何？それ。」

「母さんの日記だ。嬉しい事も、悲しかった事も、いっぱい書いてある。フェイが辛い思いをした時にって、書き終わった日記帳を毎回渡してくるんだよ。」

「うん。」

読んでみた。お母さんの日記帳を。

漢字には、全部読み方が書いてあった。

ーーーー
4/1
今日はフェイが掴まり立ちが出来た！
とっても嬉しくて嬉しくて。
私もアスレイも嬉し過ぎて大泣き。
きっと、フェイが成長するたびに思うんだろうな。

5/5
今日はこどもの日。
鯉のぼりを庭に飾って、フェイが元気で優しい子に育つように、私もお仕事を頑張らなきゃって思った。
フェイが元気に育ってくれれば、それほど嬉しい事は無いなって、思った。
フェイ、お母さんもお父さんも、あなたのことが大好きだよ。
ーーーー
まだまだ先が有ったけど、ここまでで涙が溢れて止まらなかった。

「さて、母さんの誕生日プレゼント、買いに行くか。」

「うんっ！」