107話 ページ10
「ここで大丈夫か?Aちゃん」
A「えぇ…ありがとうございます」
近くにあった大きめの洞窟を避難場所とし、私の着ていたコート敷き、背負っていたたしぎ大佐をその上に寝かせた
その近くの岩場に数人がかりで運ばれたスモーカーは目を瞑ったままだった
「Aちゃん、俺達…どうすれば…」
スモーカーの心臓が取られてしまったのは誰が見ても分かる
部下たちはスモーカーの安否が気になって仕方がないようであった
私はスモーカーの近くまで寄ると、元々心臓があった場所に手を置く
胸に大きな風穴が空いているため、手のひらは冷たくなるが、元々あった場所の周りはまだ暖かい
首元に手を添える。おかしなことに脈も平常時と何ら変わりない
彼の顔に耳を寄せれば、呼吸音もちゃんと聞こえてくる
A「生きてる」
「え?!」
体も暖かい。心臓が取られているが、普通に生きている
「ん…」
スモーカーの指先がピクリと動き、息を吹き返したように身体を起こした
A「スモーカー!」
「スモさん!!」
身動ぎをしてゆっくりと起き上がるスモーカー
「あれ…私は一体…」
彼が発した第一声はそれだった
…私?
その場にいた全員が彼の言葉を聞き間違えたと思い、戸惑いもすぐに消えた
「スモさん、大丈夫か?」
気を使ってか、Gー5の人間は控えめにそう聞いた
「スモさん?…あ!そ、そうです!!スモーカーさんは?!スモーカーさんはどうなったんですか?!」
ガバッといきなり起き上がった彼に私を含めた全員がピシッと固まった
…なに、言ってるんだ?スモーカーは…
なんの冗談かも分からず、なんと声をかければいいのかもわからない
こんな高度なドッキリは初めてだ…
「うっ…」
今度は後ろの方から唸り声が聞こえてきた
風の流れでもできたかのように全員が同じ方向を見る
たしぎ大佐が起き上がっていた
思考が現実に追いついていないもの達は全員たしぎ大佐に助けを求めようとしていたのだが
「いてぇな…何が起こったんだ…ローのやつはどこに行った…?」
再び静寂が訪れる事態になってしまった
…いつから2人は打ち合わせをしていたんだ?
「あ、あの?大佐、ちゃん?」
やっと発せられた言葉はその問いであった
もはやその言葉は彼女が彼女であるかの確認だ
「あ?何言ってやがる
たしぎはそっちにいるだろ」
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作者名:ToaRin | 作成日時:2019年11月4日 1時