140話 ページ43
A「こっそり…？ダメだよ。バレたらどうするの…」
バレたら叱られるなんてものじゃない
巫女は神聖でならなければいけない。部屋には許可したもの以外入ってはいけないのだ
子供の出来心であっても、許されるものでは無い
シオン「バレなきゃいいんだよ。この部屋って、Aちゃんが許可しないと誰も入っちゃいけないんでしょ？誰か来たら、入れなければいいだけじゃん」
A「帰りはどうするの」
シオン「明け方の３時から5時は見張りがいないから、その時間に帰るよ」
A「なんで私より詳しいんだ…」
少し話すと、私は咳き込んだ
朝より幾分かマシにはなったが、まだ熱がある
シオン「大丈夫？」
A「うん…」
しんどそうに見えたのか、私を見てシオンは眉を下げた
シオン「……ごめん、熱があるのに押しかけて…」
A「ううん…いいよ、大丈夫」
俯くシオンをみて、らしくないと思った
天真爛漫なあの子が悲しそうな顔をしてるのが珍しかった
A「なんで……来てくれたの？」
こんな危険を侵して、わざわざここまでやってきてくれたのには絶対に理由がある
単純に、気になった
シオン「……独りは…寂しいと思って…」
誰かと一緒にいることを禁じられた私
そんな私を見兼ねて、彼女は毎日こっそり逢いに来た
いつもの理由と、何ら変わりない
A「そっか……
ありがとう」
熱のせいか、寝ぼけているからか、口角が緩んだ
下手くそな笑い方だったのか、彼女はぽかんと口を開けた
それがなんだか面白くて、私はクスリと笑った
A「ふふっ…いい匂いがするね。それはなに？」
小さな鍋が椅子の上に置かれていた
私を気遣って作ってきてくれたんだろう。とてもいい香りがする
シオン「え？！あぁ！これね！これはね…」
彼女はその鍋を持って蓋を開ける準備をした
シオンがにぃっと笑うと、パカッとその蓋が開かれ、白い湯気が立ち上がり、辺り一体が濃厚な香りで満たされた
シオン「一応、シチュー…なんだけど…」
A「シチュー…？」
病人にシチュー？それは初めて聞いた
実は、風邪によく聞く料理だったりするのか？
シオン「うちではね、風邪ひいた時にはお母さんがさらさらのシチューを作ってくれるの。すっごく美味しいんだ」
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作者名：ToaRin | 作成日時：2019年11月4日 1時
