生きることを許さないで ページ46
.
「...え、」
こんのすけがびくりと肩を揺らして顔を此方に向ける。その瞳と目が合うと、黒豆がぐらりと揺らいだ。
「なに、仰るんですか...もういいって、」
「っ、...終わりに、しよう」
幾分か息苦しさは無くなったけど、やっぱりまだすらすらと言葉は出てこない。途切れ途切れになってしまうけど、それでも私はそう言葉を紡いだ。
「A殿、何故そんなこと、」
「お前いい加減にしろ!!ぶっ飛ばすぞ!!」
ビリビリと空気が揺れた。
困惑した表情の蜻蛉切の言葉を遮って叫んだ和泉守が、堀川と同じ海色の瞳で私を睨み付ける。
「死ぬのは許さねえからな!!!」
ぐっと右手が握られる感覚がした。
私の手を握った和泉守の手が、想像していたよりもずっと温かくて。
「...本当は...私はここに、いないんだよ」
気づけばそんなことを口走っていた。
「...どう意味だよ、それ、」
和泉守が、皆が困惑の表情を浮かべて、こんのすけが俯くのが見えた。
「...」
吐き出したいものが胸の内をぐるぐる渦巻いて、でもそれを言葉にするほどの余力がなくて。
...あのね、本当は私、ここにはいないはずなんだよ。
これは終わったはずの私の物語の、本当はなかったはずの"続き"なんだ。
だから私がここにいるのは、ただの手違い。だって元々ここにはいなかったんだから。
"終わっている"ことが当然なんだ。
私がここにいるのも、皆と出会ったのも、
あんな幸せな日々を歩んでしまったのも、ただの手違いなんだ。
だからさ、終わらせてよ。
もう、
「...充分、生きたよ」
.
「...まだ何も聞いてない」
静かで、それでいて凛とした声が耳に届いた。
「...国広、」
声の主である堀川が、遠くで燃える緋色を僅かに差した海の瞳で私のことを射抜く。
「まだ僕は、何も聞いてない」
うん、何も話してない。
「お前が何隠してるのかも、何ぐずぐすしてるのかも何も知らない」
何も教えてない。
「...言うまで黙っておこうって思ってたけど、さすがにもういいでしょ」
だから、
「A、」
お願い、
「ちゃんと生きて、もう隠さないで」
これ以上、生きることを許さないで。
そう思うのに。
「...本丸帰ったら、何したい?A」
君が、あんまりにも優しく笑うから。
生きたい。
まだ、皆と一緒にいたい。
そう、願ってしまう。
.
248人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時