雲足速く過ぎ去るは世 ページ34
【和泉守side】
「見る者が息を呑む白銀の刀身に、雪のように冷たく鋭利な刃...。いやぁ、一目でいいから見てみたいもんだ」
そんな店主の声が何処か遠くで聞こえた。
「...っ、」
「親父さん、注文ー」
「ただいま！んじゃ兄ちゃんら、ごゆっくり」
喉が張り付いてしまったように言葉を発せない俺達に気づかず、店主は別の客に呼ばれ去ってしまう。
残された俺達は、ただ止まった思考回路を動かそうと必死だった。
「...どういう、ことじゃ...」
先に口を開いたのは陸奥守だった。
「紫空切氷雪っちゅうのは、Aのことやろう...？...Aが、鬼を倒したっちゅうことか？」
「...店主の話からすればそうだが...」
「...そがなこと、あいつは一言も言うちょらん」
そうだ。
あいつは俺達に何も言ってない。
鬼を倒したことどころか、この時代に縁があるということも。
同じ名を持った別の刀？あるいは贋作や写しの可能性か？
いや、きっとどれも違う。
『おまん、何かあったんか？』
『別に何もないよ』
それは、出陣してからのあいつの様子が変だったことが充分な理由になる。
...Aが打たれたのは確か、江戸時代初期。存在してても何も不思議はない。
ただ、何故何も言わなかった？
自分のことを包み隠さず全て話せ、というのは少し違うとは思う。
でも、かつて自分が倒したという鬼の話が冬夜達から出たのだ。一言くらい言ってくれてもいいものだろう。
それに今の俺達の状況をあいつだって知ってるはずだ。
"敵の目的が分からない"。
少しでも情報が欲しい今、あいつの知っていることが何か手掛かりになるかもしれないのに。
何故何も...
「...何か隠しちゅうのか？」
「！」
奇しくも、隣の奴も同じ結論に至ったらしかった。
「早う合流して話を聞くぜよ、和泉守」
「...話する暇があんならそうしてえよ」
「何を言っ＿」
怪訝そうに眉を顰め俺を見た陸奥守の目が、俺の背後に広がる空を捉えた。
その目が大きく見開かれる。
「何じゃ、あれ...」
振り返り空を見上げる。
茜色の美しい空に、ぽっかりと開いた黒い穴。
その周りを揺蕩う不気味な橙色の光。
初めて見たわけじゃねえ。何度も見たことある。
それでも、本来なら今見るはずのねえその光。
「和泉守さん、陸奥守さん！」
現れたこんのすけが、それの正体を口にした。
「時空の歪みが現れました！遡行軍がやって来ます!!」
.
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...！！ (2020年2月14日 8時) (
レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます！リクエスト了解しました！もうしばしお待ちください！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…！夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩歌 | 作成日時：2018年12月28日 13時
