苦さ、7割【Q.K】 (ページ22)

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今日、私は夜までオフィスに残る。

理由はテスト。暫く来れなくなってしまうから今できる範囲を終わらせておきたくて。

定時をすっかり過ぎたオフィスにはほとんど人がいなくて
少し怖かった。

｢Aちゃん、ちょっと撮影部屋きて｣
伊沢さんに呼ばれる。

山本さんと話してから自覚したこの感情はほんの少しのことで反応してしまう。

伊沢さんと仕事の話をするだけ

伊沢さんは私を何とも思っていない

そう言い聞かせないと心臓が暴走を繰り返してしまう。

｢お、Aちゃん来た。あのさ、ここのところなんだけど｣

そう始まった真夜中、2人だけの会議

上辺では落ち着いた私を繕っているけど少し紐を緩めると崩れ落ちてしまう。

｢Aちゃん、嫌だったらどうしてもいいからね｣

─俺さ、Aちゃんのこと好きみたい─

空耳かと思った。

私が都合よく勘違いしたと。

｢......私の空耳ですか？｣
｢もっかい言うね。Aちゃんのことが好きです。｣

嘘だ。私なんかのこと

｢嘘なんかじゃないよ。ごめんね、忘れて｣

" 忘れて " ?

｢嫌です。私も、伊沢さんのこと、好きです｣
おそらく後半は聞き取れないくらい小さくなっていたと思う

｢え、嘘だ｣
｢伊沢さんが私の『嘘』を訂正したのに
今度は自分で言うんですか｣

出来ることなら今すぐ伊沢さんに顔をうずめたい。
耳まで熱い。

｢山本と付き合ってるんじゃないの｣
.....何を誤解してるんだろうか

｢そんな訳ないじゃないですか。相談していたんですよ｣
伊沢さんのことを。

さっきまでの不安そうな顔から一転笑顔で私を包み込んだ

｢じゃあ、俺と付き合ってくれますか？｣
｢私で良ければ｣
こんなときまでぶっきらぼうな私を好きになってくれて嬉しい

そんな意図も込めて抱き返した。

　