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パタパタと足音を立てて、先程のウマ娘が帰ってきた。手にはコンビニのレジ袋を提げている。
まだ数分しか経ってないのに。ウマ娘ってほんとに足速いんだなあ。
ぼんやりとしている私に、彼女が近寄ってくる。
私の前でしゃがみこんだかと思うと、私をそっと抱き寄せてきた。
「落ち着いて。息を吸って、ゆっくり吐くんだ」
赤子をあやすような手つきで、ぽんぽんと背中を叩かれる。若干低く落ち着いた声が、私の鼓膜を心地よく震わせる。
言われた通りにたどたどしく深呼吸をしていると、呼吸が段々と落ち着いてきた。
『あ、りがとうございます』
けほけほと咳き込みながらお礼を言う。
呼吸は落ち着いたものの、涙はまだ止まらない。彼女は何も言わず、ただ私の背を撫で続けている。
・・・
数分、数十分… よく分からないけれど、それなりに時間が経った。ようやく涙の止まった私から、彼女の腕がそっと離れていく。
「…手当て、できるかい？」
静かに言いながら、レジ袋を渡される。
中には、絆創膏に包帯、ティッシュ、消毒液… と応急処置の為の道具が一通り揃っているみたいだ。
『あ、できます。すみません…』
申し訳無さに俯きながら、袋を受け取ろうと腕を伸ばす。血が固まって塞がりかけていた傷口が僅かに開いて、小さな血液の玉が光った。
「…やっぱり私がするよ」
私の手に渡りかけた袋が、ふたたび彼女の方へ戻る。
すみません、すみません…と呟く私に構わず、彼女はてきぱきと包帯を巻いてくれる。
「はい、できたよ」
『…ありがとうございます。本当にすみません… お金と、あと… そのコートも洗って返すので、連絡先教えてもらえますか』
彼女のスプリングコートの肩口は、私の涙と共に落ちたであろうファンデーションで白く染まっている。
私って、本当に最悪だ。
「…私を上着無しで帰すつもりかい？」
『あっ、寒いですよね！ どうしよう…』
「…ククッ、冗談だよ。それから、謝りすぎ」
場にそぐわない笑い声に、俯いていた顔を上げる。
取り乱していて気付かなかったけれど… この人、すごく綺麗だ。
『でも、本当に申し訳ないです。気持ち悪かったですよね』
「誰だって取り乱すことはあるんだから、そんなに気にしないで良い。君は相当苦労しているんだろう？」
『うん、いや、そうでもないです… とにかく、ありがとうございました。コート、すぐ返しますね』
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作者名：winter | 作成日時：2022年11月6日 9時
