超光速のプリンセスに溺れる【ウマ娘】 (ページ9)

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お菓子の皿もティーポットも、空になった。カフェは少し前に課題をしたいと言って帰っていった。
閉め切ったカーテンの隙間から朱色の光が漏れ、外ではカラスの鳴き声がお茶会の終わりを告げている。

『お菓子も無くなったし、そろそろお開きにしようか。楽しかったよ』
A「はい、そろそろ良い時間ですね…。あの、私もすごく楽しかったです！また会いに来てもいいですか…？」

おねだりをする小動物のように、上目遣いで問いかけてくる彼女の頭を思わず撫でる。手入れの行き届いた綺麗な芦毛が、ふわふわとして心地よい。
『ああ、いつでもおいで。君は実に興味深い…』

・・・
荷物を持って扉を開けようとする彼女が、何かを思い出したようにこちらを振り返る。
A「そういえば、私が飲んだお薬って、どんな効果があるんですか？」
『ああ、軽い疲労回復効果があるよ。君は随分と努力家らしいからね。よく噂を聞くよ。…副作用は無いから、安心したまえ』
A「えっ、そんな…！嬉しいです。お気遣いありがとうございます！」

へにゃりと微笑む彼女の朱い顔は、夕陽の色か、それとも…

『それじゃあ、気をつけて』
夕陽に照らされた彼女の芦毛は、真っ白なキャンバスのようにその色を写し、朱色に染まる。彼女が夕空にさらわれたのではないかと錯覚して、ぱちぱちと瞬きをした。

機嫌良さげに揺れる彼女の尻尾を眺めながら、研究室の扉を閉じる。
彼女から返されたジャージには、すっかり彼女の匂いが染み付いていた。ジャージを抱きしめると、彼女の柔らかい匂いに包まれる。
真っ白で華奢で、私よりほんの少し背が小さくて、声は鈴の音のようで…彼女は、とても儚げだ。本当に存在しているのか不安になるほどに。
ふわりと香るジャージの匂いに彼女の存在を肯定されたような気がして、つい先程まで有った幸せの余韻に浸った。

・・・
『何をしているんだ、私は…』
自分の行動に驚いたようにひとりごちた栗毛のウマ娘は、いつまでも、いつまでも、焼けるように朱い空を眺めていた。