ページ49
side;A
広いグラウンドの端、職員や来客用に設置されている駐車場に、大きなバスが停車した。
少し間を置いて、ウマ娘達がぞろぞろと降りて来る。
中には見知った顔もいて、それぞれ筋肉がついていたり、日焼けしていたり、顔つきが変わっていたりと、夏合宿で重ねた努力を感じさせる姿をしていた。
時折知り合いに手を振りながら、バスの出入り口をじっと見つめて、タキオン先輩が降りてくるのを待つ。
数分程経って、栗毛のウルフカットがひょこっと覗いた。
ほんの少し日焼けしたタキオン先輩は、眠たそうに目を擦って、トレーナーさんに手を引かれながら降りてきた。
バスの中で寝てたんだろうな。髪の毛、ちょっと伸びてる。
いても立ってもいられなくて、先輩のもとへ駆け出した。
『タキオン先輩っ！』
タ「わっ」
勢い余って飛び着いた私を、先輩がぎゅっと抱き締めてキャッチしてくれる。
いつもの先輩とは少し違う、旅先の匂いに心が踊った。
タ「久しぶりだね、Aくん。元気してた…ようだね」
嬉しさを隠せない私に、タキオン先輩が苦笑する。
『えへへ、会いたかったです…！』
タ「ふふ、私も会いたかったよ。………暑いし、何より人前だけど、大丈夫かい？」
『あっ…忘れてた…！』
周りのひと達の物珍しげな視線と、ちらほら聞こえる、あのタキオンが…という声に、現実に引き戻される。
顔が赤らむのを感じながら、先輩から離れた。
「やあ、久しぶりだね。数ヶ月前にダンススタジオにいた娘だよね？」
気恥ずかしさにもじもじしていると、重たそうに、大きな荷物を抱えてやってきたトレーナーさんに話しかけられた。
『あ、そうです！お久しぶりです…！』
『…それ、私も持ちます』
「本当？助かるよ。君は…Aちゃんだったっけ？いい子だねえ」
『あ、そうです。ご存知なんですね、嬉しいです…！』
「期待の新星だってトレーナーの間で話題だからね。いい後輩持ったね、タキオン」
タ「そうだね。本当に…可愛い後輩だよ」
『ふふ、そんな…』
ぽんぽんと私の頭を撫でながら言う先輩の横顔が、なんともかっこいい。
耳を曲げて、すり寄るように先輩の手に頭を押し付けた。
次に続きます
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：winter | 作成日時：2022年8月13日 2時
