ぬくもり ページ5
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トレーナーごめん、会議長引いてる! もうすぐ終わると思うから、先に準備運動とか済ませといて!
A了解です
LANEを閉じて、寒さに鳥肌の立った腕をさする。
休み明けのトレーニングでやる気満々だったのに、こんな日に限ってトレーナーがいないなんて、ついてない。準備運動はもう十分すぎるほどしたし、完全に手持ち無沙汰だ。
『……今日は_ラダーとか、たぶん使うよね。準備しとこう』
トレーナーが来るまでに何本か走れそうだけれど、そのせいで今日のメニューに支障が出てはいけない。かといってここでダラダラしているのも嫌だから、今日使いそうな器具を倉庫に取りに行くことにした。
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「おーいカフェ！今日は併走するって約束だろう？」
「そんな約束してません」
倉庫の入り口に差し掛かったところで、少し遠くから聞こえてきた声に心臓が跳ねる。
顔をあげると、タキオン先輩が満面の笑みで黒髪のウマ娘を追いかけ回していた。
この間の大人っぽい印象とはうって変わって子供のようにはしゃぐその姿から、目が離せなくなる。かわいい。お友達の前だとあんな風に笑うんだ。
流石先輩とでも言うべきだろうか、ただの追いかけっこにしては、2人とも速すぎるけれど。
『っ、くしゅん！』
あっという間にこちらに迫ってきて、ああ、行っちゃう、なんて思った矢先に、大きなくしゃみが出た。
くしゃみをしたのが私だと知ってか知らずか、タキオン先輩が足を止めて振り返る。目が合って、こんにちは、と挨拶をすれば、先輩は黙ったままジャージを脱ぎだした。
困惑する私の肩に、まだぬくもりの残るジャージがぱさりと掛けられる。
風邪をひくよ。
呟いた先輩は、また何事も無かったかのように追いかけっこを始めてしまった。
『えっ、あっ、ありがとうございます』
遠く小さくなっていく背中を見つめる。
驚きと嬉しさとが混じって、私はただ、先輩のジャージをぎゅうと抱きしめる事しかできなかった。
『かっこよすぎる…』
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作者名：winter | 作成日時：2022年8月13日 2時
